小池都知事再選 危機管理策の強化・拡充を


 東京都知事選は、無所属で現職の小池百合子氏が大差で再選された。最大の争点となった新型コロナウイルス対策で都民から幅広く支持された結果だが、再選の喜びに浸っている余裕はない。コロナ第2波に備え実効性のある対策の実施が必要だ。
 また、これからの季節に予想される大型台風や大型地震など自然災害への準備も不可欠である。第2次小池都政には、危機管理策の強化・拡充が求められている。

 発信力に欠ける訴え

 小池知事は「次の(任期の)4年間は、東京にとって死活的に重要だ。緊張感を持ってコロナにしっかり対応していきたい」と語った。新型コロナ対策が都政の最優先課題であることは間違いない。ここ5日間は連続して100人を超える新規感染者が出ており、再拡大する危うい傾向にある。

 知事は「第2波に備える重要な時期」だとし、米疾病対策センター(CDC)の東京版創設や検査体制の拡充、重症度に応じた医療体制整備などに取り組む意向を示した。これらが公約である以上、着実に実行することが必要だ。しかし、東京版のCDCといっても、すでにある都の検査、研究機能を有効活用するという程度で、実効性がどれだけあるのか不明だ。箱ものを作ればいいというわけにはいかない。

 「夜の街への外出は控えて」「不要不急の他県への移動も控えて」と知事は呼び掛けるが、緊急事態宣言が出されて休業要請をした時や「東京アラート」を発動していた時ほどの発信力に欠ける。20代から30代の若者の感染数も拡大しているが「検査数が増えてきたから」という説明だけでは説得力不足だ。国や他の道府県との協力を通じて、あらゆる封じ込め策を先手で実施していかねばならない。

 知事は感染拡大防止と経済活動の両立も訴えてきた。しかし、4月に踏み切った休業要請による協力金などで1兆円以上も費やし、都の貯金のほとんどを使ってしまった。全ての業種に一斉に休業要請することはもはや不可能に近い。

 知事は今後、3000億円規模の補正予算を組むことを明らかにしたが、財政運営をどう舵(かじ)取りしていくのか、大きな課題である。

 開催延期となった東京五輪・パラリンピックの準備にも向き合わねばならない。都の財政状況が厳しくなっていく中で、数千億円とされる追加費用捻出に国との折衝が控えている。五輪開催は経済復興にも、知事の言う「アスリートや子供たちの希望」に応えることも重要だが、国威発揚にもなる。「質を落とさずに開催する」と語るが、その簡素化をどう実現するのか、知事の手腕が問われよう。

 自然災害にも備えを

 緊急事態時における危機管理は、新型コロナに対してだけではない。

 近年、異常気象が恒常化し自然災害への備えも不可欠だ。熊本では記録的な大雨によって多数の死者が出ている。大型台風や、最悪の場合、約2万3000人の死者が出ると想定されている首都直下地震などにも十分な備えをしなければならない。