経済封鎖続けば打撃大 柳氏
どう見る金正恩体制 日韓専門家対談(5)
制裁は指導部向け効果 坂井
北朝鮮の核・ミサイル開発では日本から、例えば在日本朝鮮人科学技術協会や大学などに在籍する在日朝鮮人による技術流出、対北経済支援を通じた韓国からの資金転用も指摘されている。
坂井隆 一般的に考えて最も重要なのは、核、ミサイルを実際に開発した経験を持つパキスタンなどの諸国(個人含め)との協力・連携に基づくものであり、それに比すると日本からのものは周辺的な位置付けと考えるのが常識的ではないか。
柳東烈 過去、金大中・盧武鉉両政権が行った対北支援を代表とする太陽政策が結果的に北朝鮮の核・ミサイル開発費用に転用されたという主張は説得力が高いと考える。
坂井 お金には色は付けられないから「開城工業団地で北朝鮮に渡った資金が開発に使われた」云々(うんぬん)の議論はあまり意味がない。
しかし、より検討されるべきは、経済支援の付与決定に際し、どのような狙いがあり、それがどの程度奏功したのか、あるいは失敗したのか、その時点での北朝鮮の路線・政策などに対する認識、例えば太陽政策的な、温かく抱擁すれば北朝鮮もそれに応じて「外套(がいとう)を脱ぐ」との予測がどうであったのか、という点ではないかと考える。
結果として、期待されていた南北間での不可逆的な相互依存関係の深化といった効果は生じなかった。その失敗を今後の対北朝鮮政策の教訓にすべきと思う。
核・ミサイル開発に対する国連安保理決議など各種の対北制裁が実際に北朝鮮にどのくらいダメージを与えているのか疑問視する声も多いが。
柳 国連、米国、日本、韓国、欧州連合(EU)など国際社会の制裁がそれなりに北朝鮮を心理的に圧迫しているのは確かだ。北朝鮮はこれを短期的には克服できるかもしれないが、長期化した場合は経済に相当なダメージを受けるだろう。
ただ、そのためには中国が積極的に制裁に協力する必要がある。国際的な経済封鎖の中で北朝鮮と国境を接する中国までもその「後門」を閉め、あらゆる生活必需品や原油が中国から北朝鮮に入っていかなくなった時、北朝鮮への打撃は大きい。しかし、中国が本気でそうした動きをするとは思えない。
坂井 中国の消極姿勢については同感。それに加え北朝鮮にとって核・ミサイルは体制の根幹に関わる問題でもあり、現行程度の経済制裁を受けただけでは放棄しないだろう。
柳 北朝鮮にとって核・ミサイル開発は祖父、金日成主席と父、金正日総書記の「遺訓事業」だという点でも絶対に放棄しないはずだ。
坂井 ただ、だからと言って制裁を科さなくてもいいわけではない。制裁によって体制を崩壊させるとか、核・ミサイル路線を完全に放棄させるということは期待できないが、「本当に許せない」という国際社会の意思を北朝鮮指導部に確実に伝える効果はある。






