北ミサイル開発の裏面史
8月24日、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)1発を発射し、約500キロ飛行させて日本の防空識別圏内80キロに着弾させた。狙いは性能向上テストだが、日中韓外相会談と米韓合同軍事演習に合わせたけん制だろう。
SLBMは敵から核先制攻撃を浴びた場合、自からも反撃し2次報復が出来る相互確証破壊(MAD)の戦略兵器である。冷戦時代から核戦争を防止する抑止力として「恐怖の均衡」を維持するものだ。
2015年3月、米戦略軍のヘイニー司令官(海軍大将)は「北朝鮮は核小型化に成功し、SLBMを開発中だ」と指摘した。北朝鮮は12年現在、72隻の潜水艦・艇を保有し、保有数では世界一。今後、テスト発射を繰り返して1~2年内にSLBM搭載潜水艦を配備する見通しだ。
北朝鮮はSLBMを予想を上回る速度で開発しているが、ロシア伝来のミサイル技術を独自発展させて輸出し、獲得した外貨で軍需産業を発展させ、核とさらなるミサイル開発を進めてきた。
1988年まで続いた「イ・イ戦争」で、イランがイラクの首都バグダッドに向け発射した88発のスカッドミサイルは全て北朝鮮製だった。北朝鮮は91~96年シリアにスカッドミサイル150基、99年にはリビアに5基、2001~02年はイエメンに45基をそれぞれ輸出した。
1987~2009年、世界の弾道ミサイル輸出は1200基だが、そのうち北朝鮮製が510基(40%)で第1位(2位ロシア製400基、3位中国製270基)。輸入国はエジプト、シリア、イラン、リビア、イエメン、UAE、パキスタンだ(米モントレー大学国際問題研究所、2011年3月)。
北は食糧難で貧しい片田舎国のイメージだが先端分野の「核開発」「弾道ミサイル技術」「サイバー戦」「特殊戦戦力」「潜水艦・艇戦力」は先進国並みのレベルだ。さらに、米中など強大国を振り回す外交戦略は国際政治学界の話題になって久しい。彼らを過小評価してはいけない。
(拓殖大学客員研究員・韓国統一振興院専任教授)






