対中・対米関係、次期大統領誰でも大差ない 柳氏

どう見る金正恩体制 日韓専門家対談(6)

中国、北の核で韓国取込めず 坂井

北朝鮮の金正恩委員長は伝統的な友誼(ゆうぎ)の関係を強調しながら核・ミサイル問題で近年ぎくしゃくしていた中国、また表面的には非難しながら実は最も関係改善を願っている相手とされる米国とどのような関係を構築できるか。

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昨年9月3日、北京で開かれた抗日戦争勝利70年の記念式典で、中央から離れた場所で軍事パレード参観する北朝鮮の崔竜海労働党書記(EPA時事)

 柳東烈 北中(朝中)関係は戦略的にアプローチしなければならない。中国にとって北朝鮮はどういう存在なのか。中国が米国と対立する時、北朝鮮は中国にとって戦略的な防波堤で、北朝鮮のおかげで直接に米国と対峙(たいじ)しなくて済むことこそ北朝鮮の存在価値だ。中国は表向きには北朝鮮の核や弾道ミサイルに反対し警告するが、内心はその逆だ。

 核やミサイルで一時的に北中関係が悪化したとしても基本的には二国間の戦略的関係は維持されるほかない。側近の一人である崔竜海氏が訪中した際にまともな会談もできずに帰ったということがあったが、両国関係はそのようなことだけで推し量ることはできない。

 坂井隆 中朝関係は習近平国家主席個人がどうかという問題ではなく、伝統的、歴史的、地政学的な条件を基盤として形成されてきたもので、それらが変化しない限り指導者の個性によってそれほど大きな変化は生じないと考えてよいのではないか。

 中国が北朝鮮の核開発を内心歓迎しているというご指摘があったが、米国との関係で「駒」として使えるという意味では中国にとって都合がいい面もある。ただ、日本や韓国がそれに刺激されて米国との関係強化に動いたり、軍事力を強化することは結果的に中国にとって非常に好ましくない。中国としてはせっかく韓国を取り込もうとしていたのにうまくいかなくなる。だから迷惑な面もある。

金正恩氏が訪中する見通しについてはどうか。

 坂井 中国の対北政策によって変わるので予測は難しいが、北朝鮮としては金正日総書記並みの相応の待遇で迎えてくれるのであれば内外に権威高揚の効果も期待でき、ぜひ行きたいのではないか。だが、北朝鮮が何か大きな譲歩をした上で行くというシナリオは、国内的に権威低下につながりかねず、のめないだろう。

  米国との関係構築について言うと、米国は基本的に北朝鮮を韓半島と米国の安全保障を脅かす敵と見なしており、対北政策は共和党政権にしろ民主党政権にしろ大きな差がない。両者にはより穏健的かより強硬的かの戦術的な差があるだけだ。

 北朝鮮が核・ミサイルを放棄し、国際平和秩序を維持することに協力しない限り、次期大統領がクリントン氏であれトランプ氏であれ米国の対北政策には現在と大きな変化はないだろう。北朝鮮は米国に接近しようとするだろうが、成果は上げられないのではないか。

 坂井 北朝鮮の基本的な対米路線(要求、期待事項)は不変であり、それに対し米国側がどう出るかに応じて具体的なアプローチを出してくるというのが基本的な構図。従ってまずは米新政権の対北朝鮮政策が定まるまでは、揺さぶりとか宣伝攻勢のようなものは除き、実質的な意味を有する大きな動きはないだろう。