北朝鮮 ICBM多弾頭化を推進か


「世界最大」発射台も

 北朝鮮は10日に平壌で実施した軍事パレードで新型とみられる大型移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)を公開した。国際的な制裁、圧力にもかかわらず、北朝鮮が依然としてミサイル開発を意欲的に進めていることを示すものであり、米専門家は、迎撃が困難な「多弾頭化」を進めているのではないかとの見方を明らかにした。

北朝鮮が平壌で行った軍事パレードで公開した、新型とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)=朝鮮中央テレビが10日に放映した映像より(AFP時事)

北朝鮮が平壌で行った軍事パレードで公開した、新型とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)=朝鮮中央テレビが10日に放映した映像より(AFP時事)

 米シンクタンク、民主主義防衛財団の上級研究員デービッド・マクスウェル氏は「パレードは、核兵器、ミサイル、既存の兵器システム、兵士の装備まであらゆる分野で能力を高めていることを示すためのもの」と指摘、北朝鮮が制裁や新型コロナウイルスなどによる困難にもかかわらず、兵器開発を意欲的に進めているとの見方を示した。

 パレードに登場した新型ミサイルは、2017年に試射したICBM「火星15」よりも大幅に大型化され、発射台も火星15の18輪から22輪へと増加している。

 国際評価戦略センター上級研究員で軍事問題専門家のリック・フィッシャー氏は、新型ICBMは火星15と直径は同じだが、「全長は長く、新しいバス(誘導装置と小型ロケットを装備したロケットの最終段。弾頭が搭載されている)を備えている」と指摘、北が核ミサイルの多弾頭化を進めているとの見方を示した。

 新型発射台については、中国が2010年に北朝鮮に売却した16輪の発射台の派生型とみられている。

 フィッシャー氏は「この発射台は世界最大」と指摘、「中国で製造されたものか、三江航天集団/中国航天科工集団公司の支援を受けて北朝鮮で組み立てられたかのどちらかだ。北朝鮮による新たな制裁違反であることは明らかだ」と指摘した。

 北朝鮮は18年のシンガポールでの第1回米朝首脳会談後も、短距離ミサイルの試射を繰り返してきたが、トランプ米大統領は、ICBM試射や核実験を実施しないという会談での約束は守られていると主張、問題視してこなかった。

 米国防総省は、北朝鮮による近年のミサイル開発の進展を受けて、戦略ミサイル防衛の見直しを迫られており、米軍インド太平洋軍のデービッドソン司令官は18年、「現在は北の攻撃を阻止できる。しかし、今後5年間の北朝鮮のミサイル開発を考えれば、ミサイル防衛全体を向上させ、見直す必要が出てくる」と警告していた。

 現在、グアムと韓国に「高高度防衛ミサイル(THAAD)」が配備され、太平洋、日本近海にイージス艦が展開しているが、デービッドソン氏は「ハワイへの新型防衛レーダーの配備による国土ミサイル防衛の向上、地上発射型迎撃ミサイル(GBI)の追加配備」の推進の必要性を訴えている。

(ワシントン・タイムズ特約)