韓国の元慰安婦団体トップ、被害者支援より北朝鮮追従

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 募金や国の助成金を被害者支援に充てず、私的に流用していた疑惑が浮上している韓国の元慰安婦団体トップが、夫婦で韓国定着の脱北者たちに北朝鮮に帰るよう懐柔していたとする報道が波紋を広げている。これまで問題視されてきた北朝鮮への追従姿勢を改めて裏付けるもので、30年近くに及ぶ慰安婦支援活動もそうした偏向的理念の下、日韓分断も目的に続けられた可能性がある。(編集委員・上田勇実)

夫が脱北者に帰国懐柔
日韓分断を密かに誘導?

 21日付韓国大手紙・朝鮮日報によると、慰安婦団体の「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(=正義連、旧挺身隊問題対策協議会=挺対協)」の理事長で先月の国会議員選挙で当選した尹美香氏は2018年10月、ソウル市内の慰安婦施設で韓国に集団亡命した中国浙江省の北朝鮮レストラン従業員たちを引率した元支配人に2度会った。その場には左派系弁護士団体の関係者3人と在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の関係者3人も同席した。

尹美香氏(左端)。右端は元慰安婦の故金福童さん

2017年11月、ソウルの日本大使館前での反日集会に参加した尹美香氏(左端)。右端は元慰安婦の故金福童さん。金さんが設立した奨学金を尹氏が流用した疑惑も浮上している(上田勇実撮影)

 翌日、尹氏は夫の金三石氏を元支配人に紹介。同年12月、元支配人と元従業員3人は金氏から誘われ地方旅行に行ったが、そこで金氏や正義連関係者から北朝鮮に戻ることを懐柔されたという。集団脱北後、北朝鮮は繰り返し送還を要求していた。

 金氏らは自分たちが参加した北朝鮮での行事の写真を見せ、「将軍様(金正日総書記)」や「首領様(金日成主席)」という単語を連呼したり、北朝鮮の革命歌謡を歌いだしたため、元支配人は不安になり途中でソウルに戻ったという。

 同紙によると、元支配人や従業員らの金融機関口座には「後援金」と称し約半年にわたり月30万~50万ウォンずつ振り込まれた。弁護士団体関係者は資金の出所について「正義連の後援金」と明らかにしたが、その頃の元慰安婦たちへの年間現金支給額は3人に対し計44万ウォンにすぎなかったという。

 金氏は1992年の反国家団体との接触などによる国家保安法違反で有罪判決が確定。14年に国家転覆を企てたとして強制解散させられた極左政党、統合進歩党のリーダーで内乱扇動罪で服役中の李石基・元議員と親しいことでも知られる。報道が事実なら尹氏は夫と共に慰安婦支援を軽視したまま北朝鮮に追従していたことになる。

 尹氏は3月、韓国ネット放送の番組に出演、自身への親北疑惑について「まるで私が北朝鮮から指令を受けているかのように言われるが、それは朴槿恵前大統領に追従していた人たちが被(かぶ)せた『反日は親北主義』というフレーム」と嘲笑交じりに述べていた。

 李明博政権で青瓦台外交安保首席秘書官を務めた千英宇氏は先週、自身のユーチューブチャンネルで、12年に日韓両政府間で話し合われた慰安婦問題の妥協案を尹氏に説明したところ、尹氏の顔が「困惑した表情でいっぱいになった」ため、「元慰安婦と支援団体との利害は異なり、問題解決は尹氏にとってもう活動をやめろという死刑宣告を受けたに等しかったことを悟った」と述べた。

 尹氏の活動は表向きは慰安婦支援だが、実際は支援運動を隠れ蓑(みの)として各種資金を流用するとともに、問題解決を妨害することで北朝鮮の思惑通り日韓分断を密(ひそ)かに誘導しようとしたのではないかという疑いが強まりそうだ。