金正恩政権の“貧者の虚勢”
宮塚コリア研究所代表 宮塚 利雄
「コロナ感染ゼロ」と吹聴
実際は病死者・餓死者続出か
中国武漢市で発生した新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっており、やがて地球の全国家・地域にまで感染する勢いだ。テレビや新聞に感染国が赤色で色付けされている地図を見るが、北朝鮮は新型ウイルス発生国の隣国(1500㌔も国境を接している)にもかかわらず、地図上では白色であり、北朝鮮の隣の国の韓国が孤島のように見える。
「漆黒の写真」は偽れず
この地図を見るたびに思い出すのは、アメリカの航空宇宙局(NASA)が「世界の夜」の電力事情を映した写真である。これを見ると、アジア地域では日本や韓国、中国、台湾などが煌々(こうこう)と照らされているのに、北朝鮮だけは平壌地域だけがわずかに曙光が見える程度で、これまた暗黒の北朝鮮の隣にある韓国が孤島のように写っている。
前者の白色の北朝鮮は、武漢発の新型コロナウイルスの感染国が中国以外の地域にも広がり始めた時に、いち早く「わが国には新型コロナの感染者はいない」と世界保健機関(WHО)に報告し、さらには3月13日付の「労働新聞」でも「わが国には(ウイルスは)入ってきていない」と主張し続けているため、「感染者ゼロの可能性は“ゼロ”」と分かっていても、北朝鮮を感染国とすることができないからである。
つまり、地図上の白色は北朝鮮が、新型コロナウイルス感染者が大量に発生しているのにもかかわらず、“ある物をない”と言い続けている産物である。一方の「漆黒の北朝鮮写真」は「北朝鮮が“出したくても出せない”(弱小な電力生産により煌々とした夜景を見せたくても見せることができない)」現実を突き付けられたものであった。平たく言うならば「白色は嘘(うそ)の事実、黒色は嘘をつきたくてもつけない」北朝鮮の姿である。
北朝鮮はこれからも「感染者ゼロ国」を吹聴し続けるだろうか。誰もが信じないどころか、ウイルス蔓延(まんえん)による死者が発生し、市場での商売ができなくなり餓死者が続出している。国際社会はこのまま北朝鮮の発表を鵜呑(うの)みにして放置するのではなく、一時も早い医療援助に出て、北朝鮮国内における感染拡大の防止と社会的な混乱を抑えなくてはならない。というのも、この数年、冬季に北朝鮮の小型木造漁船(舟)が日本海側の浜辺に漂着することが多いので、新型コロナウイルスに感染した北朝鮮人民が、漁船に紛れ込んで日本にやって来るのではないかと危惧する声もあるからだ。
1993年に日本や韓国、中国東北部などが異常気象で、農業生産は凶作に陥ったが、一人北朝鮮だけは「今年もわが国は豊作であった。各地の協同組合では盛大に豊作の生産分配祭りが繰り広げられている」と大々的に伝えたが、北朝鮮も同じく異常気象により農産物は豊作ではなかった。それにもかかわらず、周辺国が「凶作であった」と素直に認めたのに対し、北朝鮮は「わが国は偉大な指導者同志の賢明な農業政策の指導により豊作であった」というようなことを公表した。北朝鮮の農業生産量は94年までは同国農業省発表の数字をそのまま受け入れるしかなかった。
95年からは国連の機関が実態調査をするようになったが、問題はこの年に「例年豊作万作」の北朝鮮が、日本から「有償35万㌧、無償15万㌧の食糧援助」を受けていたことである。この時、北朝鮮の“偉大な指導者”は「小泉の野郎が米をくれてやると言ったからもらってやった」と言ったそうだ。北朝鮮はこの時の有償のコメ代金を日本に払うことはなく、利子1回分だけを払っただけである。
米申し出受けるか注目
北朝鮮はいつまで「新型コロナウイルスの感染者はいない」と言い張るのだろうか。アメリカのトランプ大統領が金正恩委員長に「米朝関係改善や新型コロナウイル対策での協力」を行う親書を送ったというが、この申し出を受け入れるのか注目される。空にはミサイル発射を繰り返し、これから始まる農作業の田畑には北朝鮮独自の主体肥料という糞尿(ふんにょう)弾を投下することになるが、金正恩委員長は大丈夫か。日本の某月刊誌に「金正恩・『武漢コロナ』と妹・与正の挟撃におののく」という記事があった。
(みやつか・としお)