コロナ以後の世の中、国民の選択は


韓国紙セゲイルボ

 今回の総選挙で新型コロナウイルスを超える争点はなかった。政権中盤期の国政選挙だが、文在寅政権の失政問題は有権者の耳目を引かなかった。経済活力と雇用を萎縮させた所得主導成長、マンション価格の高止まりを招いた不動産政策、国民を争いの場に追い込んだ曺国(チョグク)問題を顧みる間もなく、選挙が進んだ。

分裂の政治では克服できない

 売り上げが落ち、職場をなくして東奔西走し、学校に行けない子供たちの世話で精魂尽き果て、もしかして感染し、会社や近所の迷惑になるのではと気をもみながら、国民はコロナで変わりはてた日常に耐えている。もうコロナ以前の世の中に戻ることはできない。コロナ以後の世の中は、灰色だらけの展望だ。

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15日、新型コロナウイルス感染拡大の中、韓国済州市の投票所で、手袋をして一票を投じる有権者(EPA時事)

 ゲオルギエバ国際通貨基金(IMF)総裁は世界経済が1930年代の大恐慌以来、最悪になると指摘した。韓国経済研究院も所得主導成長で体力が低下した韓国経済が大恐慌初期と似ていると分析した。

 各国政府がコロナ防疫に重点を置いて政府の規模を拡大する傾向が経済に悪影響を及ぼすとの分析も出ている。エコノミストは有権者と消費者、投資家らが民間競争力を蚕食する“スーパー政府”の登場を防がなければなければならないと報じた。

 周辺には総選挙後を心配する声が多い。大韓民国号が難破せず、未曾有の経済危機の波を乗り越えられるかという心配だ。船長の運航能力は既に明らかになっている。昨年、韓国の名目経済成長率は1・4%で経済協力開発機構(OECD)加盟36カ国中34位。IMFは今年の韓国経済成長率をマイナス1・2%と推定。2019年決算の国家債務は728兆ウォン超だ。コロナ台風で揺らぐ企業は次期国会で吹き荒れる規制の嵐がもっと恐ろしいという。

 コロナ感染で早まる第4次産業革命の核心は創意、革新だ。大統領直属第4次産業革命委の張ビョンギュ元委員長は、週52時間制を「(70年代までの)頭髪取り締まりのような古い規制」と述べ、李在雄ソカー前代表は乗合自動車共有サービス「タダ」禁止法制定に「革新を禁止した政府と国会は死んだ」と書いた。

 次期国会は創意・革新のDNAを持つ政治家たちで満たされるだろうか。コロナ以後の世の中は次期国会が主導するしかない。文大統領は14日の国務会議でコロナ危機をチャンスにできると語った。ただし方式は従前と変わらなければならない。

 「私だけ正しい」という傲慢(ごうまん)のリーダーシップ、敵味方に二分する“分裂の政治”ではコロナパンデミック危機を克服し難い。民間企業、ベンチャーの有望株たちの足を引っ張り、規制の物差しを突きつけるスーパー政府では回復を遅らせるだけだ。だから国民の選択は重要だ。いつもそうだが、大韓民国の運命は投票所に行く有権者が決めるためだ。

(黄政美編集人、4月15日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。

ポイント解説

コロナ後の世界に必要な指導者とは

 記事掲載時には既に韓国総選挙の結果は明らかになっている。与野党いずれが勝利しても文在寅政権の“中間評価”となる。文政府前半期が記事指摘のように経済、政治、それにここでは言及されていない外交安保までがガタガタになっており、それを受ければ、有権者の選択は政府に厳しいものであるはずだが、さて結果はどうか。事前の予測では与党はそれほど負けない、というものだった。

 しかし、いまは特別な時だ。新型コロナウイルス禍が全世界を襲っており、それへの対応で各政府は手いっぱいのはずだ。政府と国民が一致団結して取り組まなければ克服は難しいと言われている。韓国だろうと日本だろうと事情は同じだ。

 しかし、政治の残念なところは、この国難に際して、与野党が一致して取り組むどころか、揚げ足取りの批判攻撃を繰り返すばかりで、これも国が変わろうと同じだ。

 黄政美編集人はコロナ後の社会について、「コロナ感染で早まる第4次産業革命の核心は創意、革新だ」と指摘している。その芽を摘んだり、足を引っ張ってはならないと警告するが同感だ。コロナが全世界的に収まった後、各国はどのようにリスタートするか。様相の変わった世界で誰が先頭を走れるのか、イニシアティブを握るのか。

 それはひとえに政治指導者にかかっている。目標を示し、皆を一致団結させ、前進を邪魔せず後押しする。それには哲学と教養に裏打ちされた国家観、世界観を持った者が不可欠だ。どのような指導者がこの禍を克服し、国や世界を救うのか。日韓も世界も同じ課題に直面している。

(岩崎 哲)