コロナとビッグブラザー
“ビッグブラザー”とは独占した情報によって社会を統制する権力として、英国の作家、ジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場した言葉だ。新型コロナウイルスが全地球的な災難に乗じてビッグブラザーの悪霊を呼び起こした。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって各国が先端技術を利用したビッグブラザー式の監視体制を強化し、人権侵害論争が起こっている。
欧州連合(EU)は「個人情報保護政策が新型コロナの大流行局面で防疫を妨害してはならない」という立場を表明した。EUが世界で初めて個人情報保護法を施行したことを考えると異例の事態だ。ドイツ、イタリアなどが感染者・隔離者などのスマートフォンを追跡して動線を把握し、隔離状態を監視している。香港は入国者追跡用に電子ブレスレットを導入し、わが国(韓国)は自宅待機守則の違反者に対し本人の同意を得て“安心バンド”(スマホから20㍍以上離れると通報する電子リストバンド)をはめることにした。
中国は高層マンションの間にサーモグラフィーカメラがついたドローンを飛ばしており、鄭州市では地下鉄、スーパー、病院などに顔認識技術が導入された。アップルとグーグルは感染者との接触可能性がある人にスマホで通知する技術開発に着手した。ロシアでは人権侵害論争のため挫折した顔認識装置の構築事業を新型コロナが蘇(よみがえ)らせた。
最近、フランスの弁護士が「韓国は監視と告発が多く、他人を密告してカネを稼ぐ国」との寄稿文を書いて論争となっている。フランス政府のスマホ追跡システム推進に反対する趣旨とはいえ突拍子もないことだ。韓国政府は「民主的な手続きに従って進めている」と反論した。新型コロナ終息後が心配だ。米国の外交専門誌フォーリン・ポリシーは「コロナ・パンデミックは世界を永遠に変えてしまうだろう」として、国家が一度“統制の味”を知ると過去に戻らないようにするだろうと指摘した。
世界保健機関(WHO)は21世紀を感染病の時代と規定しており、第2、第3の新型コロナ問題が勃発するかもしれない。いつまで位置追跡と監視カメラ、物理的な距離の確保に頼れるかも疑問だ。物理的な距離を確保するアンタクト技術とサービスは一定部分、個人情報の犠牲を伴う。人類が耐え得る情報統制の水準で政府が社会的リスクを管理しなければならない時代が到来しつつある。
(4月14日付)
※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。