露潜水艦がNATOの脅威に


海底通信網の破壊に懸念

 ロシアが大西洋、北極海で潜水艦の活動を活発化させていることから、米軍の通信に欠くことのできない海底光ケーブル網が破壊される可能性が指摘され、トランプ政権は、対応を迫られている。

バージニア級攻撃型原潜ジョン

大西洋を航行する米海軍のバージニア級攻撃型原潜ジョン・ワーナー(米海軍提供)

 米シンクタンク、大西洋評議会の大西洋安全保障イニシアチブのノーデンマン所長は、ロシアの潜水艦隊の「作戦行動のペースは、冷戦時の水準に達しようとしている。ロシアの脅威を受けて、米軍も大西洋への関心を強めている」と、大西洋、北極海でロシア海軍による脅威が高まっていることを強調した。

 北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルク事務総長は昨年12月、ロシアが潜水艦隊の強化を進めており、2013年以降で13隻が軍に引き渡されたと指摘。NATO加盟国は、戦力で後れを取り、「活動も少なく、スキルも劣っている」と高まるロシア海軍の脅威に警告を発している。

 その中でも特に懸念されているのは、大西洋と北極海の海底に張りめぐらされている88万㌔の光通信ケーブルが破壊される可能性だ。

 米海軍の元高官で現在、ヘリテージ財団上級研究員のトム・カレンダー氏は「ロシアは、20~30年前から光ケーブルに危害を加える能力を持っている。…これは、戦略的脅威と言っていい」と指摘した。軍民問わず、海底ケーブルへの通信の依存は高まっており、ケーブルが破壊されれば致命的な被害をもたらすのは間違いない。

 ワシントンのハイテク企業テレジオグラフィーによると、10年前、海底ケーブルへのインターネットの依存度はわずか1%だったが、現在は軍民、機密、非機密問わずその依存度は95%に達する。

 カレンダー氏は「どこかの国が何かすれば、大変なことになる。その能力がある、それだけで警戒すべきだ」と警鐘を鳴らす。

 ノールドマン氏は、これらのケーブルを守ることは、何十年も前から米軍にとって重要な課題だったが、アフガニスタン、イラクでの戦争、中東でのテロ対策、中国の台頭、南シナ海での領有権争いなどが優先され、脇にやられてきたと指摘、「(海軍幹部らは米同時多発テロ以降)優先課題でなかった大西洋での活動に再び、取り組もうとしている」と語った。

 10月からの新会計年度予算案で海軍は、潜水艦への予算の増額を要求、国防総省は、新たにコロンビア級攻撃型原潜1隻の建造を要求した。海軍は2隻のバージニア級攻撃型原潜の導入を求めている。

(ワシントン・タイムズ特約)