改革と自由化を国民支持

ウズベキスタン副首相 アジズ・アブドハキモフ氏に聞く

 中央アジアのウズベキスタンでは、24日に大統領選挙が行われた。就任以来、大胆な改革と自由化を進めてきたミルジヨエフ大統領をどう国民が評価するか、また今後の日本との関係、アフガニスタン問題など、知日派のアジズ・アブドハキモフ副首相(観光、文化、スポーツ、メディア等担当)が、世界日報と共同通信、毎日新聞のインタビューに応じた。
(聞き手=タシケント藤橋進特別編集委員)

ウズベクの心伝える日本人向けツアー準備
タリバン政権と政治・経済面で協力

ウズベキスタン副首相 アジズ・アブドハキモフ氏

ウズベキスタン副首相 アジズ・アブドハキモフ氏

ミルジヨエフ大統領の5年間を振り返って、なぜ国民の人気がここまであるのか、どういうところに成果があったと考えるか。

 まずウズベキスタンを世界に開いた。例えば以前、ビザなしで入国できる国は9カ国だけだったのが、91カ国になり、さらに3カ国追加される。また大統領が力を入れた分野ではメディアが自由になったことが大きい。以前はマスコミもいろいろ政権に忖度(そんたく)して書いていたが、今では首相や副首相、知事に対して何でも書く。カリモフ大統領時代はそれはなかった。古い官僚などは最初は戸惑い困っていたが、今では非常にオープンになった。問題があれば原因を明らかにし解決を求められるようになった。

 経済面では、閉鎖性が打破された。海外の投資家にとっては、投資して利益を上げてもそれを簡単に両替できないことが大きな障害になっていたが、それがなくなった。社会面では、女性や低所得者への新しい取り組みが実施された。職のない多数の若者が、ロシアなどに出稼ぎに出ていたが、雇用の創出に力を入れ海外への出稼ぎ人口は大幅に減少した。

 そして官僚は国民のために働くべきという新しい原則をつくった。昔は大臣も9割の時間をタシケントで過ごしたが、それが逆になって、地方の現場に行って、問題点がないかを見、あれば対処するようになった。

中央アジアの国々はソ連時代以来の強権的な国が多い中で、ウズベキスタンだけが、改革・開放、自由化の方向に進んでいるのはなぜか。

 初代のカリモフ大統領は、国の安定を保つことに何より力を入れてきた。その27年の間に国民は自由を求めるようになった。そういう中でミルジヨエフ大統領が、前大統領が国に比重を置いたのに対し、政策の中心に人間を据えた。

ミルジヨエフ大統領は、いろいろ改革を進めてきたが、今後、この国のためにもっとやっていくべきことは何か。

 もちろん、選挙で決まる新大統領がこれから新政策を決めることになるが、私の考えでは、今後の5年間、経済が第1のテーマになるだろう。経済が強くなければ、社会的な問題を解決し豊かに発展していくことができない。ロシアは最大の貿易相手国だが、欧米の制裁を受け経済力は落ちている。相手国を広げていく必要がある。外国からの投資を呼び込むために、手続きの簡素化と共に、ウズベキスタンへの投資は何が魅力的なのかを考え、アピールする必要がある。

 教育面も重要なテーマだ。9%にすぎなかった大学進学率が30%に伸びたが、今後は50%を目標としている。

これからの日本との関係で、どういうことを期待するか。

 2019年12月にミルジヨエフ大統領が訪日し、大きなプログラムが採用されたが、新型コロナウイルスのパンデミックのためほとんど進んでいない。われわれはポスト・コロナについて考える時だ。文化、観光では日本人向けの観光ツアーを考えている。日本人が来た時に何が最も関心を引くのかなどを考えながら、例えば、一般のウズベク人の家庭に宿泊し、民族料理を作ったりしながらウズベキスタンの習慣や心を知ってもらう。そのために3000以上の民宿をつくった。

 経済面ではエネルギー関連の大きなプロジェクトがあり、文化の分野では、日本から招いてコンサートを開いたり、こちらから日本へ行って公演し、ウズベキスタンの文化を紹介したいと思う。教育分野では、名古屋大学、筑波大学とのプロジェクトを加速させることで合意している。

アフガニスタンでタリバンが政権を掌握するようになったが、その影響をどう捉え、対処しようとしているのか。

 タリバンが政府を樹立したという事実があり、これから20、30年の間、アフガニスタンを経営すると思われる。現在のタリバンは、20年前とだいぶ違って、世界と協調しないと国の発展もないと理解している。ウズベキスタンはタリバン政府との協力を始めた。政治だけでなく経済・貿易の分野でもこれからアフガニスタンと積極的に協力しようとしている。

 アフガニスタンでは40年以上、戦争が続いてきた。タリバンはこれを終わらせる力を持っている。安定した状況が生まれればそれは前進だ。

 海外からはタリバン政権に強いプレッシャーがかけられているが、タリバンが言うには、彼らは政府ポストにしても、パシュトゥン、ウズベク、タジク、ハザラなど民族ごとに割り振るのでなく、能力主義を採用し、アフガンという新しいアイデンティティーを創りたいとしている。そういう点を国際社会は少しでも理解すべきだと思う。タリバンの宗教的イデオロギーについても、彼らが何を伝えたいと考えているのか、彼らと話し合う前にもっと深く分析すべきだ。