【静岡5区】保守分裂に割り込む野党
’21衆院選 注目区を行く(4)
「無所属というハンデを背負ったとしても、自衛隊の存在を認めない共産党と連携し、野党として選挙を戦うことは私にはどうしてもできなかった」
公示後初の週末となる22日、小雨の降る中、JR三島駅南口に集まった200人ほどの聴衆を前に熱弁を振るったのは、7連続当選の細野豪志だった。安全保障政策を強調し、保守層へアピールする。
細野は民主党政権時、環境相や党幹事長を歴任。前回の衆院選では希望の党立ち上げに参加するも同党は尻すぼみ。本人も無所属となった。2019年1月、二階派に唯一の「特別会員」として入会。今回勝利し自民党入りを目指す。
人気と知名度のある細野だが、演説中に聴衆から「裏切り者!」と罵(ののし)られるシーンも。「これまでにない厳しい戦い」(選対関係者)となっている。
これに真っ向から立ち向かうのが自民党公認の吉川赳(たける)だ。23日に開かれた個人演説会では「本来、選挙は理念や政策で判断いただくこと。候補者の一身上の都合であってはいけない」と、名指しこそしないものの、細野を念頭に批判した。
吉川の所属する派閥のトップ岸田文雄は、先の総裁選で勝利。直後、二階俊博は幹事長を下ろされた。岸田派と二階派の代理戦争の様相を呈している保守分裂選挙で「岸田総理誕生は追い風になっている」(自民関係者)という。
とはいえ、吉川は細野に3連敗中。細野は自公支持者にも支持基盤を広げており、過去3回吉川を推薦した公明(比例得票2万7000前後)も今回は自主投票となり、細野陣営で積極的に活動する公明支持者もいる。
吉川選対関係者は「これまで毎回1万票近く(細野との)差を縮めてきた」が、「前回(17年)の4万票の差は大きい」と、険しい表情で語った。
熾烈(しれつ)な攻防を繰り広げる保守系候補の間に割り込むのが、立憲民主党の新人、小野範和だ。24日、富士市内の演説では「コロナ対策がうまく進まなかったのは、政治が信頼されていないからだ」と政権を批判した。
野党統一候補の小野は、「公認争いだとか、党内の争いばかりして国民はそっちのけだ」と細野、吉川を非難する。母親で伊豆の国市の元市長、小野登志子も応援に余念がない。
小野選対関係者は、「今まで野党だった票の新しい受け皿になれるかがカギ」と、細野の支持基盤の切り崩しを図る。
ただ、連合は組織力が弱く、細野支持者も多い。17年衆院選で立民と共産の比例得票の合計は5万2000余り。勝利するにはかなりの票の上積みが必要だ。 24日投開票の参議院補選では、野党系の山崎真之輔(立憲、国民推薦)が、自民党新人の若林洋平(公明推薦)を破った。自民関係者は「厳しさが増す戦いとなった」と気を引き締めているが、選挙の基本構図を変えるほどの影響はなさそうだ。(敬称略)
(川瀬裕也)
【静岡5区の立候補者】
細野 豪志50 元環境相 無 前
小野 範和48 元銀行員 立 新
吉川 赳39 元復興政務官自 前
千田 光43 自営業 諸 新
※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。無=無所属、立=立憲民主党、自=自民党、諸=諸派。
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