【広島3区】自公「最重点」不信根強く


 ’21衆院選 注目区を行く(2)

候補者の演説に耳を傾ける有権 者ら 21 日、広島市安佐南区

候補者の演説に耳を傾ける有権者ら 21日、広島市安佐南区

 「私の盟友であり同志である斉藤鉄夫さんに、何としても勝ち抜いていただきたい」

 公示翌日の20日、広島市安佐南区の駅前に響き渡ったのは、地元選出の首相・岸田文雄の声だった。マイクを握る岸田の横には、国土交通相に任命された公明副代表の斉藤鉄夫が並ぶ。中選挙区制の時代、同じ広島1区(当時)から選出された当選同期の間柄。演説では当時の思い出を語り、時折顔を見合わせるなど「盟友」関係をアピールした。

 広島3区は、東京高裁への控訴取り下げによって実刑判決が確定した元法相・河井克行の地元。自民は長年維持してきた議席を譲り、公明にとっては全国で九つ目の小選挙区となる。2019年参院選で大規模買収事件の舞台になった3区は「政治とカネ」の震源地とも称され、「有権者の意識は他と全く違う」(立民関係者)。公示直後から与野党の幹部が続々と応援に駆け付ける「最重点区」(公明関係者)だ。

 8万票を当選ラインとみる斉藤陣営にとって、自民支持層からの票をどれだけ得られるかが命運を左右する。「うちの基礎票だけでは難しい。いろいろな人の協力を得なければいけない」(選対幹部)。当初、3区では自民新人の石橋林太郎が出馬を予定していたが、公明が譲らず比例中国ブロックに回った経緯がある。集会や街頭演説に訪れた有権者からは「間違いなく割り込み。心情的に入れたくないというのはある」(自民支持者)、「自民が不祥事を起こしたから公明から出ているのに」(公明支持者)などの声も漏れ、不満がくすぶる。

 ただ、国交相就任が斉藤にとって追い風になっている。選対幹部は「地元の関係諸団体も、落としてなるものかという雰囲気になってきた」と語る。自民からは連日、石橋のほか地元選出議員らが街頭演説に帯同。「ぎくしゃくしたことは事実。だが解決できたのは20年以上の両党の絆があったからだ」と強調した。

広島3区 地図

広島3区 地図

 一方、野党統一候補として立民から出馬するのは新人のライアン真由美。第一声では「必ず金権政治を終わらせる。政権を代えて、この国を取り戻そう」と訴えた。4月の参院広島選挙区再選挙では、事実上の与野党一騎打ちの構図から、野党が共闘した「結集ひろしま」が勝利を収めたが、陣営は「再選挙で1回負けて、自民支持者の間には(自民を)懲らしめた感もあるだろう」と引き締める。公示日には立民代表代行の蓮舫、21日には代表・枝野幸男が応援に駆け付けた。

 斉藤の国交相就任について、選対幹部は「うまいやり方だ。自民の支持層は建設業者。そこが真面目にやり始めたらしんどい」とこぼす。当初は当選ラインについて、「6万票を分け合うくらいだとみていたが、分からなくなった」(同)。

 さらに両陣営が影響を警戒するのが、維新新人の瀬木寛親だ。「金権政治との決別」を掲げ、自民支持層と無党派層の双方から取り込みを狙う。21日には幹事長の馬場伸幸が応援演説に立ち、「改革を広島3区から」と訴えた。(敬称略)

(亀井玲那)

【広島3区の立候補者】

 大山 宏    73 元会社員   無 新

 矢島 秀平   29 ベーシスト  N 新

 斉藤 鉄夫   69 国交相    公 前

                   推(自)

 玉田 憲勲   64 医師     無 新

 ライアン 真由美58 元会社役員  立 新

 瀬木 寛親   57 ラジオ司会者 維 新

※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。N=NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で、公=公明党、自=自民党、立=立憲民主党、維=日本維新の会。丸かっこは推薦政党。


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