【東京8区】青空集会で突破図る石原
’21衆院選 注目区を行く(5)
杉並区の大部分を占める8区は、11選を目指す自民前職の石原伸晃に、野党統一候補の吉田晴美が挑む事実上の一騎討ちの様相だ。今月8日にれいわ新選組代表の山本太郎が出馬表明したが撤回、共産党も候補者を下ろしたことで、野党共闘の象徴区となった。
公示日の19日、杉並区役所前で第一声を上げた石原の元には、同区長をはじめ、自民の地元選出議員ら十数人が集結。赤のネクタイ姿でマイクを握った石原は「政権を取るため、共産と立民が野合して私たち自公に刃を突き付けている」と訴えた。
それに応えて聴衆からは「野党は矛盾している」との声も。石原は選挙カーの手すりから大きく身を乗り出し、深いお辞儀で締めくくった。
対する吉田も同日午後、阿佐ケ谷駅前で、「野党統一のために本当に苦しい決断をされた」と出馬を断念した候補に謝意を述べた。
前回の17年、約10万弱の票で勝利した石原に対し、吉田は約7万6千票と約2万3千票差だった。そこに組織票を持つ共産の約2万2千票や、れいわ票が加わることになる。19年7月の参院選での杉並区の比例得票数は自公約9万7千に対して、立共れいわ合わせて約10万6千だった。「立民支持層の『共産アレルギー』も踏まえると拮抗すると予想される」と読む石原陣営関係者は「候補本人も『今までで一番しんどい』と漏らしている」と明かした。
10選といえども、回を重ねるごとに得票数が減少し、前回はとうとう得票率が40%を切った。頼みの石原軍団は解散し、恒例の応援に来られない。公明は他選挙区の応援に熱心で動きが鈍い。前回まで他候補の応援に出向いていた石原も、今回は連日地元に張り付き、基礎票固めに専念している。岸田首相にまで地元入りの応援依頼をしたほどだ。
両陣営で共通しているのはSNSでの発信が活発なことだ。1日に十数件投稿し、活動や聴衆の多さなどをアピール。選挙開始から6日目に吉田のツイッターアカウントのフォロワー数が石原を超す一幕も。前日に遊説日程を公表する吉田に対して、石原は公開しない違いもある。
加えて吉田は商店街を練り歩くなど、細かな地域回りによる支持拡大もこなしている。これに対し、石原の基本戦術は屋外での青空集会で演説し、支持者の掘り起こしをすることだ。地道な活動の積み上げで正面突破を図っている。
他方、日本維新の会から立候補した笠谷圭司は「与野党関係なく国難を乗り越えられる国会に変えていきたい」と意気込む。「自民党のしがらみ」を批判し、立共れいわの「数合わせの野合は理解に苦しむ」と語っている。
前回、希望の党から出馬し約4万票を獲得した木内孝胤票の多くが維新に流れるとみられている。さらに保守層の幅を広げ無党派層への浸透を図る。石原陣営関係者は「維新と保守票の食い合いになるのも心配材料だ」と危機感を示した。(敬称略)
(竹澤安李紗)
【東京8区の立候補者】
石原 伸晃64 元党幹事長 自 前
吉田 晴美49 元法相秘書官 立 新
推(れ)
笠谷 圭司41 元三田市議 維 新
※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。自=自民党、立=立憲民主党、れ=れいわ新選組、維=日本維新の会。丸かっこは推薦政党。
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