【神奈川18区】真価問われる「立共共闘」
’21衆院選 注目区を行く(3)
「変えるのか、変えないのか。嘘(うそ)をつかない透明性のある政治をぜひともつくっていきたい」
公示日の19日、立憲民主党の三村和也は東急電鉄・溝の口駅前で、手ぶりを交えてこう訴えた。
自民党候補の山際大志郎とは、希望の党から出馬した2017年に続く2度目の対決。前回は6万6057票を得たものの、11万1285票の山際に大差をつけられた。
ところが今回は野党共闘が成立。共産・社民などの票が加わる可能性が大きい。前回の共産票は4万252票だったため、合計すれば10万を超え、山際の背中が見えてくる。立民と共産からすれば、共闘の真価が問われる選挙区だ。
「小選挙区は三村和也、比例は共産党」。24日午後、JR南武線の武蔵新城駅前では「神奈川18区市民の会」の幟(のぼり)を2本立てて、共産党の運動員が政権交代を訴える同党の宣伝ビラを配っていた。歩道柵に並ぶ同党と市民の会のポスターの間には三村の選挙ポスターも貼られている。事実上の三村の別動隊だ。
8月の横浜市長選挙の影響により、支持率で山際との差が一気に縮まった。だが、山際はコロナ対策で出番の多い経済再生担当相に就任。三村陣営は「本当に驚いた。どう考えてもいい方向にいかない」と衝撃を受けた。山際が新閣僚として報道番組などに出演する姿に、「メディア露出の影響は大きい」(事務所スタッフ)と危機感を示す。
一方、6回目の当選を目指す山際は19日、溝口神社で出陣式を行った。約350人の聴衆の前で、現職閣僚として選挙区を回る数が少ないことを詫(わ)びつつ、「この身をすべて投じて、日本社会の再生に尽くしていく」と決意表明。自身を含めた岸田内閣への支持を呼び掛けると、「そうだ!」との掛け声が上がった。
実際に山際は、全国の応援演説に回っており、公示日の後は18区の街頭には立っていない。ただ、山際陣営は「このエリアは3年で多くの人が移り変わり、地盤が固まりにくい。無党派層が非常に多い上に世論や社会の影響を強く受ける」(選対幹部)といった地域的特性から、大臣の職務に全力を尽くすことが、選挙戦に有利に働くとの考えだ。
同選挙区は、維新の新人の横田光弘も出馬しており、票の行方を読みにくくしている。立民支持者の中には「保守票が割れる」と楽観視する向きもあるが、「(維新の方が)凄(すご)い熱量を持っていた」と警戒する声も少なくない。
横田は19日、早朝の寒さが残る午前10時から、東急電鉄・鷺沼駅で第一声を上げた。「増税を続け、緊縮財政を続けた結果、日本の経済はガタガタになった」と自公政権を批判する一方で、共闘する立民・共産に対しても「(連立政権ができれば)中国やロシア、北朝鮮と同じようになってしまいかねない」と指摘。非自民の保守層や野党共闘に批判的な立民支持層の切り崩しに懸命だ。(敬称略)
(石井孝秀・村松澄恵)
【神奈川18区の立候補者】
三村 和也46 元経産省職員 立 元
横田 光弘63 元県議 維 新
山際大志郎53 経済再生相 自 前
推(公)
※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。立=立憲民主党、維=日本維新の会、自=自民党、公=公明党。丸かっこは推薦政党。
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