【沖縄1区】支持母体が大揺れの共産


 ’21衆院選 注目区を行く(1)

演説後、聴衆とグータッチする候補者(左)=19日、沖縄県那覇市

演説後、聴衆とグータッチする候補者(左)=19日、沖縄県那覇市

「必ずこの1区でオール沖縄の議席を守る。辺野古新基地建設は不可能だ。無条件に撤去させよう」

 共産党の赤嶺政賢は公示日の19日朝、沖縄県庁前でこう訴えた。コロナ禍で外出を控える高齢者が多いためか聴衆はまばらだった。

 沖縄1区は、共産にとって全国の小選挙区で唯一議席を持つ“死守区”だ。書記局長の小池晃が真っ先に応援に駆け付け、「オール沖縄は今の野党共闘の手本。出発点は間違いなく沖縄だ」と訴えると拍手が起きた。

 ただ、赤嶺の支持母体で、沖縄県知事の玉城デニーを支える「オール沖縄」はいま、大きく揺れている。有力企業や保守系議員が袂を分かち、県議選や那覇市議選でも議席を減らしてきた。名護市辺野古沿岸部の埋め立てが進む中、相次ぐ国との訴訟で県が連敗して移設反対運動が壁にぶつかり、コロナ禍による経済沈滞が深刻になったためだ。

 前回2017年までの3回の衆院選は、赤嶺、国場幸之助、下地幹郎による三つ巴の戦いだった。12年は国場が小選挙区当選。赤嶺は比例復活するも、下地は落選した。14年は、「オール沖縄」旋風が吹き、赤嶺が当選。国場と下地は比例復活した。17年も同様の結果となった。

 自民の国場後援会長の具志孝助は「全国で唯一、共産党に取られていることに忸怩(じくじ)たる思いがする。今回こそは小選挙区で」と熱く語る。本土復帰50年を迎える22年の名護市長選や知事選への影響も念頭にあるようだ。

 岸田派の国場にとって、岸田文雄の首相就任は追い風だ。20日に岸田夫人が応援に訪れ、同じ派閥の議員や閣僚経験者の選挙区入りも予定されている。

沖縄1区 地図

沖縄1区 地図

 また、「今回は公明党の動きがすごい」。国場陣営の幹部は目を見張る。

 公明から九州比例で出馬する沖縄出身の金城泰邦は、コロナ禍で活動が十分にできないと今年6月の県議選の候補から外れた。だが公明前議員、遠山清彦の思わぬ辞任で比例候補に選任。巡ってきたチャンスを活(い)かすべく、組織を挙げて運動を展開している。

 金城と一緒に出陣式を行った国場は「基地問題反対一辺倒だけでは沖縄の未来はない」と強調。国政とのパイプを使い、コロナ禍で苦しむ沖縄経済を立て直すと訴え、金城とのダブル当選を誓った。

 他方、無所属で出馬する下地は14日の支援者集会で「選挙に勝って復党する」と意気込んだ。20年1月、IR(統合リゾート)をめぐる汚職で日本維新の会を除名されると、一部の経済界と首長経験者らが「保守合同の会」を結成し、下地の自民復党を画策した。しかし、自民党県連との対話は実現しなかった。

 比例復活の道は閉ざされ、出馬しないのではとの噂が公示直前に流れるなど、出遅れ感は否めない。下地は出陣式にオレンジ色の上着と鉢巻姿で登場、交差点を埋め尽くした支援者を前に「自民と共産の二つの組織に勝って初めて沖縄の政治が実現する」と訴えた。 (敬称略)

(豊田 剛)

【沖縄1区の立候補者】

赤嶺 政賢73 党幹部会委員 共 前

国場幸之助48 元外務政務官 自 前

               推(公)

下地 幹郎60 元防災相   無 前

※敬称略。届け出順。年齢は投票日現在。共=共産党、自=自民党、無=無所属。丸かっこは推薦政党。


【関連記事】
【沖縄1区】支持母体が大揺れの共産
【広島3区】自公「最重点」不信根強く
【神奈川18区】真価問われる「立共共闘」
【静岡5区】保守分裂に割り込む野党
【東京8区】青空集会で突破図る石原