【社説】安保政策 抑止力強化へ論戦深めよ


日本を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、衆院選では外交・安保政策も重要なテーマとなる。各党は抑止力強化のための政策を競ってほしい。

国家戦略改定掲げる自民

 自民党は公約で「『毅然とした日本外交の展開』と『国防力』の強化で、日本を守る」として外交・安保政策を列挙。自由、民主主義、人権、法の支配などの普遍的価値を守り抜くと明言するとともに、台湾の環太平洋連携協定(TPP)への加入申請や世界保健機関(WHO)総会のオブザーバー参加を支持する姿勢を示した。いずれも、中国が「一つの中国」原則に基づいて反対しているものだ。

米海軍との共同訓練を実施する海上自衛隊=2017年11月12日(UPI)

 このほか、防衛力を大幅に強化すべく、新たな国家安保戦略や防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画を速やかに策定するとしている。岸田文雄首相は先の臨時国会の所信表明演説で、国家安保戦略の改定を表明した。

 この戦略は2013年12月、安倍晋三政権が初めて策定。世界の平和と安定に積極的に寄与していくことを目指して打ち出した「積極的平和主義」を基本理念に据えたものである。

 それから8年が経過したが、覇権主義的な海洋進出を強める中国や、核・ミサイル開発をやめようとしない北朝鮮の脅威は高まる一方だ。安倍政権は中国を念頭に「自由で開かれたインド太平洋」構想を打ち出し、米国、オーストラリア、インドなどをはじめとする民主主義国家の連携強化を図った。

 しかし、現行の国家安保戦略に「インド太平洋」という文言は含まれていない。岸田首相は戦略改定によって、この構想の安保上の意義・役割を一層明確にするためにも、選挙戦で有権者の理解を得る必要がある。

 また公約では、敵基地攻撃能力を念頭にミサイル阻止能力の保有も盛り込んだ。北朝鮮は先月から各種ミサイルの発射を繰り返し、中国やロシアは、既存のミサイル防衛システムでの迎撃は困難とされる極超音速ミサイルの開発を進めている。ミサイルへの対応についても論戦を深めてほしい。

 対国内総生産(GDP)比2%以上も念頭に置いた防衛関係費増額にも踏み込んだ。防衛力強化に向け、自民党総裁でもある岸田首相の決意と覚悟が問われよう。

 一方、野党第1党である立憲民主党の安保に関する公約を見ると、敵基地攻撃能力への言及はあるが「これまでの憲法解釈に照らしつつ、慎重な検討」を行うとしている。「専守防衛に徹しつつ」という文言も見られ、これで中国や北朝鮮などの脅威に対処できるか懸念が残る。

 疑問なのは、米軍普天間飛行場の辺野古への移設を中止するとしていることだ。普天間の危険性を除去しつつ在日米軍の抑止力を維持する上で、辺野古移設以外の方法があるとは考えられない。

立憲は国民を守れるか

 立憲は衆院選で政権を獲得した場合、公約で日米安保条約廃棄や自衛隊解消を掲げる共産党と「限定的閣外協力」を行うことで合意している。これで、国民の生命と財産を守ることができるのか。票を取るための無責任な振る舞いは許されない。