政権選択を問うた朝日世論調査でさえ9条改憲賛成が反対を上回る
自民苦戦の衆院選挙
どうやら与党・自民党が苦戦しているらしい。先週、メディアの衆議院選挙の「情勢分析」がほぼ出そろった(21~23日付)。ざっくり言うと、「自民減 単独過半数の攻防」(読売)「自民 議席減の公算大」(毎日)。岸田文雄内閣にとっては厳しい予測が出ている。
日経によれば、自民党は289ある小選挙区の4割で野党候補と接戦を繰り広げており、とりわけ振り子のように勢力が変わりやすい11道府県では野党が優勢。共同通信は、自民は単独過半数(233)をうかがうものの、公示前の276議席の維持は微妙。産経は「自民 単独過半数の勢い」とするが、大都市では反自民の「風」が吹く恐れがあり、他党を圧するほどの勢いではなさそうだ。
いずれの予測でも立憲民主党は野党共闘が奏功し大幅議席増を見込み、日本維新の会は大阪を中心に躍進、共産党も議席を増やし、公明党は手堅く、国民民主党などは議席維持が微妙としている。野党は相当数の足し算で、自民はおのずと引き算。その攻防は単独過半数ライン。とはいえ、自公で過半数を維持し、政権交代はなし。序盤戦の情勢はそんなところか。
が、選挙は魔物という。2016年の米大統領選では民主党に肩入れするリベラル派メディアの世論調査がトランプ勝利を予測できず、赤恥をかいた。報道で当落が左右されるなら一種の選挙運動で、公平性が損なわれかねない。そんな疑問もあり、海外では選挙期間中の世論調査公表を禁じる国もある。
予測報道を受け有権者の投票行動が変化することを「アナウンス効果」という。このうち、勝ち馬に乗るのは「バンドワゴン効果」、逆に不利な方に同情票が集まるのは「アンダードッグ効果」と呼ばれる。わが国の場合、どちらか一方が強過ぎると、判官びいきか、有権者に平衡感覚が働くらしい。それで過去の国政選挙の予測報道は何度か外れた。
その最たるものが1998年参院選で「自民大勝」と予測したが、結果は惨敗。2000年総選挙は「自民安定多数うかがう」が過半数割れ、03年総選挙も「自民、単独過半数」が過半数割れだった。どれも自民党が“被害”を受けた。最近は調査の正確さが向上しているが、アナウンス効果は少なからずある。おまけに今回は接戦だ。予測報道がどう影響するかは分からない。
与党支持が野党の倍
朝日は先週、情勢分析記事を掲載しなかったが、政権選択を問うた世論調査結果は報じた(21日付)。これはなかなか興味深い内容で、「自民中心46%、立民中心22%」と与党支持がダブルスコアで野党を上回っていた。
次の首相に相応(ふさわ)しい人は「岸田氏54%、枝野氏14%」で、これも岸田氏が圧倒。枝野氏は立民政権支持者の6割程度にとどまる。民主党が政権奪取した09年衆院選の調査では麻生太郎首相20%、鳩山由紀夫氏41%、自民が奪還した12年衆院選では野田佳彦首相31%、安倍晋三氏33%だったというから、枝野氏の支持率はいかにも低い。政権交代は見果てぬ夢か。
この朝日世論調査は15問あり、その中で目を引いたのは最後の質問で「自民党は憲法9条を改正し、自衛隊を明記することを公約に掲げています。こうした憲法改正に賛成ですか」とあった。
結果は賛成47%、反対32%で、9条改憲賛成が反対を上回っていた。これは朝日調査では初めてのことではないか。14年以降の朝日調査を見ると、9条改憲反対がほぼ6割を占め、20年5月調査では65%に達していた。今年5月の憲法記念日の調査でも賛成30%、反対61%。それがついに逆転したのだ。護憲の朝日調査をもってしても9条改憲派が勝っている。これはビッグニュースだ。
保守派は改憲訴えよ
中国の軍拡や台湾危機への警戒感が強まっている証左だろう。保守候補は堂々と9条改憲を訴えるべきだ。
(増 記代司)