米の兵器、先端技術 中国軍が香港通じ不正入手
元中国工作員が証言
中国軍は、香港で米国などの武器、軍事技術を盗み出している。オーストラリアに脱出し、亡命を求めている中国の元工作員、王力強氏が明らかにした。
台湾総統選にも介入 野党候補者に資金提供
王氏はさらに、オーストラリアの治安情報局「ASIO」に提出した声明で、中国が来年1月に実施される台湾総統選に影響を及ぼすための工作、香港での民主化勢力の切り崩しのために積極的な活動をしていることを明らかにしている。
王氏は今年春まで、情報活動を任務とする中国人民解放軍総参謀部のフロント組織で働いていた。「数々のスパイ活動に単独で関わってきた。民主主義とモラルの原則に反し、メディアと世論を誘導することを目指す活動だった」と述べている。
王氏は5月、台湾に向かい、台湾の選挙に影響を与えるための数億㌦を掛けた秘密作戦に参加することを命じられた後、オーストラリアに逃亡し、現在は、妻と子供1人と共に亡命を求めている。
王氏はそれまで数年間、香港の自由な貿易制度を利用して、軍のフロント企業で情報と先端技術を収集していた。標的は、米国の人工衛星や航空宇宙関連技術、誘導ミサイルの研究に関する情報だったという。
声明によると、中国軍は、香港に上場されているフロント企業「中国創新投資」を通じて、中国への輸出が禁止されている兵器を香港から密輸しており、まず香港に運ばれた兵器などのミサイルを購入、分解して、中国に輸送している。
王氏は「中国のいわゆる先端兵器の大部分は、このルートで調達されている」と指摘した。
香港の上場企業「中国趨勢(すうせい)」の職員でもあり、香港の大学やメディアへの浸透を図る活動を行っていたという。両社の幹部は、11月25日、王氏の活動がオーストラリアで公表されたことを受けて、台湾当局に拘束された。
台湾での影響工作については、中国は台湾が「主権を失い」、台湾を「中国共産党の支配下に置く」ことを目指しているという。
王氏は、中国軍が主導する台湾への選挙介入のための影響工作が、中国との決別の主要な要因になったとしている。
具体的には、台湾野党の国民党の総統候補者らに、1420万㌦を提供、台湾独立派の与党・民進党を攻撃するフェイクニュースの拡散も行っているという。
台湾には中国軍の配下のインターネット企業が50社あり、レストランやホテルも情報収集に使われているという。
王氏は「中国は、総統選で国民党が勝てば、米国に勝つと思っている」と述べた。
また、中国共産党政権を批判する「禁書」を扱う香港の書店関係者5人が失跡した「銅鑼灣書店事件」で、親会社株主の呂波氏の拉致、中国への引き渡しにも直接関わったことを明らかにしている。拉致は、中国軍情報機関が行ったもので「(香港の)民主主義の破壊と抑圧」を狙ったものと指摘した。
王氏は11月24日に豪メディア「ナイン」で放送された報道番組「60ミニッツ」で、「台湾での工作が最も重要だった」と指摘、中国人工作員がメディア、寺、草の根組織に浸透していると強調。ASIOのバージェス長官は、王氏の情報を深刻に捉え、「積極的に捜査を進めている」ことを明らかにしている。






