憲法24条改正で家族条項を
弁護士 秋山 昭八
人口減少の事態に対処
保護規定がある諸国の憲法
総務省が5月4日発表した15歳未満の子供の推計人口(4月1日現在)は、前年より15万人少ない1605万人で、1982年から35年連続の減少となった。比較可能な50年以降の統計で、過去最少を更新。政府や地方自治体は少子化対策に力を入れるが、少子化に歯止めがかからない実態が改めて浮き彫りになった。
総人口に占める子供の割合は、前年比0・1ポイント減の12・6%で42年連続の低下、人口4000万人以上の主要国と比べても、米国(19・2%)、英国(17・7%)、中国(16・5%)、韓国(14・3%)、ドイツ(13・1%)などを下回る最低水準が続いている。
人口減少社会を迎えた日本は、地方が消滅しかねないほどの人口減少が起こり、他方で人口が集中している東京が極端な高齢化となりつつある中で、これからそのバランスをどういうふうに回復していくのかが非常に重要になる。
人口減の原因の一つは出生数が激減していることで、昨年はとうとう100万人まで減ってしまった。いわゆる戦後の団魂世代の頃は270万人ぐらい生まれていたが、今後年間3万人弱減っていけば、あと数年で、オリンピックより前に90万割れが必ず来るという大変厳しい状況にきている。
昨年末に、地方での人口減少と東京圏の高齢化を踏まえた国の長期ビジョンが地方創生の視点でまとめられ、2060年までの中長期展望で、一つ目は1億人程度の人口を維持する、二つ目は出生率目標を1・8にする、三つ目が東京一極集中を是正する、ということである。政府はそれを実現するための5カ年戦略として、今年から2019年までの最初の5カ年に、地方における安定した雇用を作る、それを梃子に地方に向かう新しい人の流れを作る方針であるが、結婚・家庭尊重・出産・子育ての若い世代の希望を叶える、地域と地域が連携する田園都市構想を決めており、まさに大平内閣の政策を思い起こさせる。
今のまま何もしないで人口が減るにまかせ、しかも最近経済の生産性が落ちており、それが続くと、長期的に見ると2040年、2050年にマイナス成長になって、経済が本当に崩壊してしまう恐れがある。何とか人口を安定させ、生産性もイノベーションによって向上させるならば、経済も成長率が1・5~2・0%くらいの安定成長まで戻る範囲になる。人口が多少減っても経済は資本・労働・経済の三要素で決まってくるので、労働の投入量が減っても、多少のことであれば生産性の向上で十分カバーできるので経済的には問題がない。
2008年がピークで1億2800万人だった人口は、今の時点で1億2600万人ぐらいまでに減っており、労働力人口に置きなおすと2013年で6500万人ぐらい、15年後の2030年には5800万人ぐらい、2060年には3800万人ぐらいまで急激に減っていくことが予想される。同年までに何とか人口を安定させ、労働力人口も4400万人ぐらいまで回復できるようにし、女性と高齢者の労働力を生かせば、労働力人口換算で5500万人ぐらいになるので、この程度の労働力の減少なら十分生産性をカバーできる筈である。
家族の重要性は世界共通の認識であり、世界の国々は法を規定することで家族制度を守ってきた。ところが、わが国の憲法には、他国の憲法や国連人権規約に見られるような明文の家族保護条項が存在しない。それを補ってきたのは民法であり、民法には家庭と婚姻について保護する規定が明記されている。
現憲法24条は、公法上の地位は平等を認められ参政権も与えられていたが、封建的大家族制度の残存である風習に支配されていたため、個人の尊厳と平等が無視されがちだったため、民主主義の根底を固めようとしたため、女性の社会的地位を高める規定をおいた。が、21世紀の今日、その役目は終えたもので、まさに人口減少化のわが国において女性の地位を高め、家族を保護するための国家的社会的意義を認め、それを維持保護することこそ肝要である。
この点ワイマール憲法及びこれにならった諸憲法や世界人権宣言に見習う必要がある。
ワイマール憲法は、婚姻及び家族の国家的民族的意義を強調し、これを達成させることを国家及び公共団体の任務とする積極的人権にまで高めた。即ち、「婚姻は、家族生活及び民族の維持増殖の基礎であるから、憲法上特別の保護を受け、多数の子供を有する家庭は、相当の扶助を請求する権利を有する。子を養育して、その肉体的、精神的並びに社会的能力を完成させることは、親の至高の義務である」旨定め、世界人権宣言16条は、「家庭は自然な、また基本的な社会の構成単位であって、社会及び国家によって保護される権利を持つ」と規定されており、わが国においても憲法24条に家族の保護育成について規定を置くべきである。
(あきやま・しょうはち)