香川県、共産票の上積みめぐり攻防
16参院選 注目区を行く(5)
全国で唯一、1人区での共産党の公認候補・田辺健一が「野党統一候補」として、公明党推薦の自民党現職・磯崎仁彦に挑む。ただ、民進党は5月に推薦候補(県議)擁立を取り下げ共産候補への一本化を実現させたが、県連内の共産党アレルギーが大きく6月11日に自主投票を打ち出した。田辺が「野党一本化」によって基礎票にどれだけ上積みできるかが焦点だ。
「ワクワクする参院選だ。日本の戦後の政治で初めてのことが起こっている」
6月29日夕、善通寺市での田辺の個人演説会で、民進、社民の県議に続いて登壇した共産の山下芳生副委員長は全国の1人区全ての野党候補一本化の意義と安倍政権批判で熱弁を振るい、「(今参院選で)ええ結果を出すことが野党協力を一歩、二歩進める試金石となる」と強調した。会場は旧陸軍将校の社交場だった旧善通寺偕行社。市内に自衛隊の駐屯地もあり、ちょうど防衛費を「人を殺すための予算」と発言した共産・藤野保史政策委員長の辞任直後だったが、同発言への言及は一切なかった。
田辺は街頭遊説や個人演説会で精力的に県内を回るが、民進党の応援演説は県議レベル止まり。公示前の6月16日、高松市で共産・志位和夫、生活・小沢一郎の両党代表に民進の安住淳国対委員長と社民の吉川元政審会長を加えた4野党首脳のそろい踏みがあった後は、中央からの応援は山下や小池晃書記局長ら共産の国会議員に限られている。
高松市の田辺選対事務所には共産、生活、社民の3党党首の必勝祈願が並ぶが、民進は岡田克也代表でなく地元選出の小川淳也衆院議員のもの。先の衆院選香川1区で小川と戦った共産党同県委の河村整県常任委員は、「(今までの経緯もあり)共同したからといってパッと一緒にはなれない」と述べつつも、「市民連合の方が来てくれたり、今も小川議員の支援者がそこで電話をかけてくれている」と指摘。北海道5区衆院補欠選での野党共闘を例に挙げて、無党派票取り込みへの期待を表明した。
一方、30日夕、滝川公民館で行われた磯崎の個人演説会では町長、町議会議長、県議、香川出身の国会議員3人が応援演説したが「獅子博兎、ライオンはウサギを獲(と)るにも全力を尽くす」「大差をもって勝つため投票率低下が心配、投票に行こう」など、慢心を戒める声が相次いだ。
前回、前々回の参院選で自民候補はともに23万票以上で当選。民主(現民進)推薦の無所属候補が約19万票と14万票で次点となり、共産候補はともに3万4000票台。社民党も先の衆院選香川3区で約2万6000票を集めている。これらの野党票が結集すれば自民との接戦もあり得るが、民進が自主投票を決め込んだ時点で「勝敗はほぼ決まり」との見方が優勢。自民の大物議員の応援も26日の岸田文雄外相だけだ。
ただ自民が圧勝した先の衆院選でも香川は1区小川(復活当選)と2区玉木雄一郎の2人の民主党議員を出した。次の衆院選での野党選挙協力に楔(くさび)を打つためにも共産票を大幅に伸ばさせるわけにはいかない。磯崎陣営は「8万は覚悟している」(選対関係者)とする一方で、自公の組織票を固めて30万票以上の圧勝を目指している。(敬称略)
(2016参院選取材班)