宮城県、 共産党が加勢する桜井に自民党が総力
16参院選 注目区を行く(1)
「共産党と組んだと批判するが、共産党と組んで何が悪いのか」。改選数2から1となった選挙区で4期目に挑む民進党の桜井充は開口一番こう訴えた。
梅雨の中休みとなった22日朝の仙台市・宮城県庁前の勾当台公園。はためく群青色の民進、赤の共産、水色の社民、緑の「オールみやぎ」という市民団体などさまざまなのぼりが並び、約400人の聴衆から前座の応援演説に起きた拍手は、連合宮城より共産党の代表者へ一段と響く。民進党自体は昨年の県議選で共産党にも負け、桜井は全国的にも先駆けて野党統一候補になった。
「9条改憲は絶対反対」「この地域にアベノミクスの恩恵はない」など一通りの政権批判の後に桜井は、「この選挙は個人対個人の選挙にしたい」と述べた。18年の実績、知名度を武器に初改選の自民党・熊谷大の追撃をかわすつもりだ。
第一声が終わると、ボランティアが「杜の都」の並木が茂る常禅寺通りを西に数分歩き、桜井の選挙事務所に向かった。法定ビラに証紙を貼る手伝いだ。これまでより10倍はかどっているという。
その運動力は公示前から示されていた。一見、民進党のビラかと見まごう桜井の写真と名前を大きく載せて下欄に「日本共産党」と書かれたカラー刷りビラをはじめ、共産党市議・県議らも後援会報で桜井を載せて戸別配布した。共産党の援軍で各選挙予測は桜井「優勢」だ。
これを打ち消すのは、桜井と仙台一高時代からの同窓で後援会事務局長の針生庸一。「2014年衆院選比例区の票は自公44万だった。民主、共産、社民、生活の34万に、維新13万を浮動票とみてその7割を得て合計しても44万に届かない」と見立て、「今は個人と個人でなく、桜井と自民党本部との戦いだ」と語り、大物の頻繁な現地入りを警戒する。
この日、民進党からは安住淳国対委員長と枝野幸男幹事長が仙台入り。仙台駅西側アーケード繁華街の藤崎ファーストタワー前での演説を終えてから枝野は、「ここを落とすようでは話にならない」と報道陣にコメントした。
一方、熊谷の応援には稲田朋美自民党政調会長が入った。石巻魚市場を第一声に選んだ熊谷は、多賀城市から仙台駅東側の宮城野区を回り、夕方に駅東口で演説した。稲田は「掛け替えのない1議席を野党に渡していいのか」と訴え、「まだ若いです。本人も未熟だと認めてます。ですが、私はこの人しかいないと思います」と切実だ。
陣営関係者は「桜井は自民から公認されなかった。今も隠れファンがいる」と漏らす。自・公票固めが鍵だが、「もう持って行かれている」と後援会長の菅井茂は隠さない。県医師会・歯科医師会は医師の桜井を支持、農政連は自主投票を決めた。「新たに開拓するしかない」(同)と厳しい戦いに挑んでいる。
雨が降りだした藤崎ファーストタワー前。熊谷は「これから復興の正念場に与党の火を消しては絶対にいけない。比例は公明党、東北の未来と復興のために、どうぞ勝たせてください」と熱く訴えた。駆け付けた高橋卓誠仙台市議は、「自民党市議団・県議団は一丸となって戦っていく」と、党を挙げた選挙に意気込む。雨の激戦区で火花が散っている。(敬称略)
(2016参院選取材班)