藤野氏更迭、共産党は綱領を書き換えよ


 共産党の藤野保史政策委員長がNHKの討論番組で、防衛費について「人を殺すための予算」と述べた自らの発言は不適切だったとして、政策委員長の辞任を表明した。発言は自衛隊を侮辱するものであり、共産党が事実上の更迭に踏み切ったのは当然だ。

 防衛費を「人殺しの予算」

 自衛隊は外国の侵略から日本を守る任務に就いている。抑止のための防衛力整備を「人殺し」と表現するのは言語道断であり、自衛隊員に極めて失礼だ。災害派遣も自衛隊の大きな役割であり、4月の熊本地震で自衛隊に助けられた被災者からも、藤野氏の発言に対する怒りの声が上がっている。

藤野保史

政策委員長辞任を表明した共産党の藤野保史氏=28日、東京・渋谷区の同党本部

 もっとも、藤野氏の発言は共産党の自衛隊に関する考え方が影響したものだと言えよう。共産党は綱領で「国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」としている。自衛隊は憲法違反との見解だ。それにもかかわらず、共産党の志位和夫委員長は急迫不正の主権侵害や大規模災害が起きた時には働いてもらうと述べている。

 これもおかしい。共産党は、安倍政権が集団的自衛権行使の限定容認を柱とする安全保障関連法を制定したことを「違憲」と批判し、立憲主義の回復を主張している。自衛隊は違憲だが働いてもらうというのは、それこそ立憲主義に反していないか。自衛隊が必要だと考えるのであれば、合憲と認め、綱領を書き換えるべきだ。

 共産党は安保関連法を「戦争法」と呼び、廃止するために「国民連合政府」構想を掲げている。しかし安保関連法は戦争を防ぐための法律であり、廃止すれば海洋進出を強化する中国や核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威に十分に対応できなくなるだろう。日本を取り巻く安保環境の厳しさを無視するかのような構想は撤回しなければならない。

 参院選では民進、共産など野党4党は改選数1の選挙区「1人区」全てで候補者を一本化した。今回の問題では、共産党と選挙協力を行う野党第1党の民進党の姿勢も問われる。

 与党の政権運営に緊張感を持たせるには、多くの国民に支えられる野党の存在が不可欠だ。民進党は二大政党制の一翼を担うことが求められている。参院選は政権選択選挙ではないが、政府・与党に対する中間評価の意味を持つ。民進党は現実的な公約を掲げ、与党と建設的な論戦を交わす必要がある。

 しかし、野党4党は安保法廃止で共闘するなど「反対のための反対」に終始しているように見える。これでは政府・与党から無責任だと批判されても仕方がない。国民の支持も広がらないだろう。

 民進党の姿勢が問われる

 ましてや共産党に関して、警察庁は「現在においても『暴力革命の方針』に変更はない」(政府答弁書)と認識している。共産党は破壊防止活動法に基づく調査対象団体だ。

 低迷する党勢を挽回する狙いがあったとはいえ、このような「革命政党」と選挙協力をしている民進党の姿勢が改めて問われる。