コロナ疲れに花の癒やしを

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家庭や職場での需要に注目

 新型コロナウイルスが花業界に大きな影響を与えている。卒業式や結婚式などの中止・縮小が相次ぎ、花の需要が大きく減少する一方、“コロナ疲れ”からリフレッシュしようと、家庭で楽しめる切り花や観葉植物などの人気が高まっている。花需要を後押しするため、SNSでのフォトコンテストも企画され、花や緑のある生活の魅力が広く発信されている。(石井孝秀)

イベント減少、創意工夫の業界

 生花の状況について、江藤拓農林水産相は3月13日の会見で、「一概には言えないが、価格が3~4割下がり、(イベントなどへの)納入が減っている例もある。(農家の)収入が半分以下というのも珍しくない」と危機感を募らせた。

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>母の日に向け、カーネーションの出荷が最盛期を迎えたJA西三河池田センター=4月30日、愛知県西尾市

 政府は花の消費拡大を図るためのキャンペーンを積極的に進めている。農水省は花飾りや花の購入を促進するため、3月6日から家庭や職場に春の花を飾って楽しむ「花いっぱいプロジェクト」を開始。公共スペースでの花展示などを推奨している。

 ギフトや法人での需要が減る中で、切り花や観葉植物の売り上げは好調だ。テレワークの環境を少しでも快適にするため花を買い求める男性も増えている。千葉県市原市などでフラワーショップを運営する「花茂」では、法人客の減少で売り上げは3割減となった半面、店舗への来客数(3月)は前年比115%と個人消費は伸びた。

 同社の大矢みな代表取締役は「客層は40~50代が多く、男性は全体の3割を占める。日持ちのするドライフラワーなども人気だ。緊急事態宣言発令以降もネットからの注文が続いている」と話す。

 業界関係者でつくる「花の国日本協議会」(東京都千代田区、井上英明理事長)は、SNSを活用した「おうちフラワーフォトコンテスト♯こういう時こそお花を飾ろう」を企画。植物コミュニティーアプリ「Green Snap」とのタイアップイベントで、今年は3月13日から4月5日にかけて実施した。

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フォトコンテストに投稿された写真とキーワード=花の国日本協議会提供

 2017年から開催している企画だが、今回は「花いっぱいプロジェクト」と連動し、投稿の条件に「花屋さんで購入した花で」と明記。また、賞品に花の商品券を選ぶなど、花需要の後押しに重点を置いた。

 毎回約1000件の投稿に対して、今回は締め切りまでに平常時の2・5倍となる約2500件の写真が投稿され、盛況だった。

 同協議会の小川典子プロモーション推進室長は「不安が続く中だと、ほっとする、癒やされる、家族の笑顔や会話が増えるなど『花の力』を実感しやすい。今回はさらに、『花店を応援しよう』といった社会貢献の意識と、花を楽しむことを発信・共有して社会と繋がる安心感を求めているような印象を受けた」と振り返った。

 コロナ感染拡大が5月10日の「母の日」や結婚式シーズンへの影響を危ぶむ声も出ている。特に母の日は業界最大のイベントとあって、当日近くになると店内が混み、買い物客や従業員の感染リスクが高まる。さらに配送業者にフラワーギフトの宅配便が集中し、混乱を招く懸念があった。

 そこで日本花き振興協議会(東京都千代田区、磯村信夫会長)は4月24日、「母の日」を「母の月」として1カ月間に分散し祝うことを提案。江戸川区の花屋では、店頭に張り紙で「早くとも遅くとも感謝の気持ちは伝わります!」と強調。来店や注文を「母の日」当日に集中させないよう、協力を呼び掛けている。

 また、東京・千住のフラワーショップ「Hanayue(ハナユエ)」は、自宅用のボタニカルワックスサシェ(ドライフラワーをワックスの中に包んだキャンドル)を先着100人に無料でプレゼントする取り組みをしている。ドライフラワーには6月の季節の花で、結婚式にも使われるアジサイを選んだ。すべて国内産で、花農家を応援するのが狙いだ。

 運営会社「ウチタカ」(代表者・内田孝男、東京都足立区)は「花の市場にはどんよりとした雰囲気が漂っている。生産者の方々が辛(つら)い思いをしないよう、販売側が工夫を凝らして頑張らなければいけない」と強調した。