朝鮮半島の安保と日韓の展望を議論 平和政策フォーラム

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 朝鮮半島の安全保障と日韓関係の展望をテーマにした「日韓平和政策学術フォーラム」(平和政策研究所・韓国平和研究学会共催)がこのほど、都内のホテルで開かれ、金根植・慶南大学校教授と元陸将の山口昇氏がそれぞれ講演した。金氏が「北朝鮮の核問題は、核開発を自ら放棄した南アフリカ方式が一番平和的な解決策だ」と発言すると、出席者からは厳しい質問が集中し、活発な議論が繰り広げられた。
(政治部・岸元玲七)

金氏 北の核廃棄「南ア方式」提案
山口氏 日韓は感情超え関係改善を

 金氏は「北東アジア平和、北朝鮮、統一」と題して講演。北東アジアの未来の平和には韓国が重要な役割を果たすと強調し、「北の核を解決し平和統一を成せば、韓半島に平和の種がつくられ日中に影響を与えることができる」と述べた。

 北朝鮮の核問題解決には、自発的に核廃棄を行った「南アフリカ方式」が最善だと力説。南アフリカは、冷戦時の反共政策とアパルトヘイト(人種隔離政策)により国際社会から孤立し制裁を受けていた状況で、1970年代から原子爆弾を製造していた。当時のデクラーク大統領が黒人を解放し民主化路線へと政策転換し、冷戦終結で周辺国家からの軍事的圧力が減少したことで核兵器を「資産ではなく負担」と判断。保有していた核弾頭を廃棄し、核開発の放棄を自ら進んで行った唯一の国として非核化の成功例と言われている。

 この事例をもとに、金氏は「北の体制が変わり、好戦的で独裁的な性格が変化して日中韓米と親しくなれば核兵器を保有する必要がなくなる」と述べた。北朝鮮での市場経済の発展が民主化を進め、政治エリートの分裂によって政権交代する時期が約15年後に訪れるとの見解を示した。

山口昇・国際大学副学長

日韓は戦略的に相互依存関係にあり、GSOMIAはなくてはならないと指摘する山口昇・国際大学副学長

 この北朝鮮の体制変化に関する発言について、参加者からは多くの懐疑的な意見や鋭い質問が寄せられた。「中国も経済発展をしているのに民主化されていない」との指摘に対し金氏は、「経済成長は独裁政権が民主化する要素のうちの一つ。政治的な条件としてエリート層の分裂やインターネットの普及、ソ連崩壊のような国際的な外部要因が必要だ」と答えた。補足として、「南アフリカの例では、制裁があったにもかかわらず政権交代により核廃棄ができたことを強調したい。経済と政治面など複合的な要素がつくられて廃棄につながる」と説明した。 

 続いて、「15年後に非核化が実現するなら日本と韓国は何をすべきか」との質問には、「日本と韓国は、状況を正確に分析して直視すべきだ」とし、今後15年の間、政府レベルよりは民間での経済的、人的交流を進め、北朝鮮社会の内部からの変化を促すことが重要だと訴えた。

 一方、元陸将で国際大学副学長の山口昇氏も登壇し、冒頭で「日韓関係は自衛隊と韓国軍の間で現場レベルにおいては悪い関係ではない」と強調。先月の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を回避したことについて「嬉(うれ)しかった」と率直な感想を述べ、「GSOMIAは日韓が互いに持っている軍事機密情報を渡し、渡された情報を守るという約束。ない方が良いというのはあり得ない」と語った。

 また、現在の日韓の対立について、「日本人と韓国人は考え方が似ている」と述べ、政治・国家レベルにおいて感情的な国民性を克服し、関係を改善していくことの必要性を訴えた。