「令和の時代」をどう生きる

メンタルヘルスカウンセラー 根本 和雄

感謝の心でストレス解消
荒波乗り越える心の処方箋

 穏やかに清々(すがすが)しい思いで新しく「令和の時代」を迎え、“令(うるわ)しく、慈しみ”に満ちた平和を築き上げる時代であることを切に祈る思いである。そして、これからは「知的倫理性と情緒的な調和」を基にして、これまでにも況(ま)して、社会の荒波と対峙(たいじ)せざるを得ないのではなかろうか。そのためにも、一人一人が社会の荒波を乗り越える心の処方箋をしっかりと身につけることが求められると思う。

“タフな人”の三つのC

 世界情勢は刻々と変化し、産業・経済はグローバル化の一途を辿(たど)り、教育・文化は多様化の様相を呈しているのではなかろうか。いまや、世相は瞬時に情報がインターネットに拡散する「超メカ化社会」のなかで、より正確な判断と知恵が求められるのである。

 それと同時に価値観の対立が激化するなかで、高度に進展するテクノロジーは、人々の心に多くの負担となって、のしかかって来ているのではないかと思う。

 従って、これからはこれらの状況に対して、より勁(つよ)く生き抜く知恵が求められるのではないかと思うのである。つまり、“疾風(しっぷう)に勁草(けいそう)を知る”(「後漢書」)のごとくではなかろうか。その知恵とは、人生の荒波に翻弄(ほんろう)されずに、難なく荒波を乗り越える心の処方箋ではないかと思う。

 心理学者のスザンヌ・コバサ(ニューヨーク市立大学)の研究は、その心の処方箋に示唆を与えてくれるのではなかろうか。

 コバサによれば、人生の荒波に押し流されて挫折する人と、その荒波を乗り越えている人との相違に着目し、その差はどこにあるのかを追求した結果、“粘り強いタフな人”の「こころの持ち方」が、それを解く鍵ではないかということが判明したという。

 では、その「こころの持ち方」とは、コバサによれば、次の<3C>が大事であるという。まず、ということ。これは自分の行動(活動)に熱中すること。次に、ということ。すなわち、当面している事態を切り開いていく自信を持つこと。そして、ということ。つまり、ストレスを担いつつも、それに挑戦し励み続けることであるという。これらが、人生の荒波を乗り越える“粘り強いタフな人”の特性で、これを「ハーディネス」と呼んでいる。

 つまり、置かれた状況で、ストレスを撥(は)ね返し、その状況を最大限に生かす力である。すなわち、“自分自身をよく知りつつ”(自己受容)かつ、“機に臨みて、変に応ずる”(臨機応変)の心の処方箋ということではなかろうか。その人の内面に秘められた頑健性で、失敗や挫折を味わうなかで培われてくる粘り強さ(図太さ)ということである。それが、健康に生きる秘訣(ひけつ)でもあるという。

 このことを裏付けるデータを紹介しよう。「生活のなかでの試練やストレスを上手に前向きに処理できない人は、できる人より約4倍も病気にかかりやすかった」という知見が示されている(ハーバード大学・心理学者ジョージ・ヴェイラン『人生への適応』1977年)。このことは、すでにH・セリエ教授(モントリオール大学)が『現代生活とストレス』(56年)の本を著し、その最後の章を「感謝の哲学」と題して、こう述べている。“ストレスの上手な解消法は感謝の心を持つことである”と。

前向きに物事受け止め

 この「感謝の心」とは、“日本古来すぐれた感性”に他ならない。物事を善意に前向きに、建設的にポジティブに受け止めれば、それが人生の張りになって、豊かな人生へと道が開かれるのではなかろうか。

 新しく迎えた「令和の時代」に、豊かな感性である感謝の念を胸に秘めて、人間が人間らしく生きられるようこの社会の荒波を乗り越えたいと切に祈る思いである。

 新しく迎えた令和の時代は、正しく「超メカ化社会」に直面し、ますます私たちの心の処方箋が問われているのではなかろうか。“心構えは事実よりはるかに重要である”(精神分析医・K・メニンガー)の言葉を改めて考えてみたいと思う。

(ねもと かずお)