日本版台湾関係法の制定を

エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

「運命共同体」の日台米
総統・大統領選前の今が好機

ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表・政治学博士
ロバート・D・エルドリッヂ

 40年前、米国では台湾との関係についての指針を示す台湾関係法が有効になった。1979年2月に制定され、同年4月に発効したが、ジミー・カーター政権の時の議会は78年12月31日に中華民国(台湾)との防衛協定を破棄し、国交を断絶したことに怒りを示し、その翌日の79年1月1日、台湾関係法を遡(さかのぼ)って発効させた。

 その中で、米国政府は台湾との商業や文化などの関係を継続することを確認した。「アメリカ合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗し得る防衛力を維持」しなければならないというものだ。

 一方、日本は、台湾とは歴史的、地理的、社会的に特に近いものの、中国を選んで外交関係を持っている。結果、台湾との関係を規定する同様の法律はない。つまり、米国はわずか数週間で台湾関連法を制定させたのに、日本は40年経てもできていない。

 これは極めて残念だ。複数の世論調査によると、台湾が最も尊敬する国は日本で、旅行先でも移住先でも最も人気がある。また、日本人も台湾を高く尊敬しており、それは昨年(2018年)11月に実施し、同12月末、在京台湾大使館にあたる台北駐日経済文化代表処が公表した世論調査の結果で明らかだ。

 その委託調査によると、日本人の64・7%はアジア地域の中で最も親しみを感じる国が台湾であり、台湾について74%は「親しみを感じる」と回答。さらに、60・4%が台湾を信頼できると答えている。親しみを感じる日本人の中で、台湾人が「親切、友好的」と答えたのは79・1%で最も多く、「歴史的に交流が長い」が45・8%で続いた。信頼できると思う理由について、「日本に友好的だから」と答えた人は67・5%で最も多い。

 さらに、現在の二国間関係に関して、71%は「良好」と答えて、「今後も発展する」と返事したのは、59・3%に上った。今後の日台関係について、特に力を入れて行うべき交流について、64・6%は「観光」とし、52・8%が「経済・貿易」、そして41・8%は「政治、安全保障関係」と答えている(詳細は「日本人の台湾に対する意識調査結果2018年」を参照)。

 日本と台湾は、国家的な危機や災害を通して言行を一致させてきた。11年の東日本大震災では台湾は寄付と人材派遣の両面で日本に寛大な支援をし、日本国民が深く感銘を受けた。それ以外にも日本は台湾から多くの善意を受けた。実際、こうした努力は震災の前も後も行われており、相互関係が出来上がっている。

 この相互尊敬や友情は、昨秋、安全保障対話、政府の関係者とOBとの会合、そして歴史的・文化的な観光地の視察で明らかになった。さらに1908年に、海軍兵学校の少尉候補生による遠洋航海中、台湾に寄港した帝国海軍の防護巡洋艦「松島」が爆沈して200人以上の乗務員が犠牲になった事故で、台湾馬公で行われる追悼式に参加したが、ここでも相互の尊敬や友情が確認できた。

 また、先月、国家基本問題研究所主催の日米台交流会議に参加する光栄を頂いた。安倍晋三総理に非常に近い、保守論客の櫻井よしこ氏は同研究所の理事長として務めている。重要なことに、安倍氏をはじめ、実弟であり元外務副大臣の岸信夫衆院議員は台湾と近い。総理府や自民党本部と台湾との間の交流が盛んに行われている。日台のさらなる接近に政治的な制約上、多くの交流は個人や非公式な使者によって実現している。この制約は誠に残念であり、日本版の台湾関係法の必要性の理由の一つ。つまり、公式あるいは、準公式な関係を格上げするためだ。

 このように日台関係を次の段階に引き上げ、日本版台湾関係法を制定することは適切でタイムリーだ。緊張を高めると批判する人もいるかもしれないが、中国が台湾を自国の一部だとする主張などは偽りの主張であり、議論を不明確にし、中国に時間稼ぎさせるだけだ。今や、戦略的な曖昧さを終わらせ、はっきり意思表示すべき時だ。

 政治的に台湾関係法を制定する機会の“窓”は、1~2年以内に閉まる可能性がある。現在、日米台の各首脳は互いの関係を過去50年、かつてないほど重視している。しかしながら、台湾と米国は、2020年には総統および大統領の選挙を迎える。日本も、21年秋まで総選挙を実施しなければならない。この3カ国の選ばれたリーダーが考えを共有し、お互いに強く信頼しなければ、関係深化の機会は失われるであろう。

 1月上旬に、トランプ米大統領が署名した「アジア再保証イニシアティブ法」が象徴しているように、日米台は運命共同体だ。しかし、この3カ国の関係は強くなく、「弱いリンク」と言える。If(もしも)ではなくWhen(いずれ)中国が台湾へ侵略することに備えるために、日本版の台湾関係法の制定は日台関係の強化につながる。日本は台湾を犠牲にしてまで中国との関係を重視している。だが、どのような経済関係でも、魂を売り、安全保障を放棄することまでしてはいけない。日本よ、中国に気を付けるべきだ。そして台湾をより大事にすべきだ。