少年院生との双方向の交流

エルドリッヂ研究所代表・政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

ロバート・D・エルドリッヂ

トモダチ作戦の経験語る
子供たちの社会復帰手助け

 今年3月から、筆者は近畿地方の少年院を定期的に訪問している。東日本大震災が起きた3月11日が近づき、米軍による救援活動における筆者の経験を少年院の子供たちに話したかったのがきっかけだった。東北の人々がしたような恐ろしい経験の中でも感謝することの大切さ、絆の重要性、地域コミュニティー、そして、他者を助けることの大切さを子供たちと議論したかった。

 筆者は教育者としての経験があることもあり、矯正施設にいる子供たちが、施設を出た後、社会復帰するための助けとなれるように話ができればと思っていた。朝のニュースで、あるミュージシャンが刑務所を訪れて服役者らと交流するのを見て、古くからの親友である大阪選出の中山泰秀衆院議員と連絡を取り、地域の法務局を紹介してもらった。その関係者はすぐに筆者に連絡をくれ、趣旨を理解し、北大阪地区のある少年院と連絡を取ってくれた。初めて訪れたのは3月19日のことである。提案してからわずか6週間と非常に速く、かつ丁寧な対応だった。

 院長と職員が施設を案内してくれた。その中で数多くの質問をしたが、いずれも誠実に、職務への情熱を持って回答してくれた。

 少年院訪問の最高の経験は、施設で暮らす14~19歳の少年たちの前で話をしたことだ。その日、施設には職員を含めて約80人がいた。少年たちは皆、集中して話を聞いてくれ、放映されたビデオを見て感動し、涙を流す少年も少なくなかった。

 質疑応答を含め約70分間、参加する機会に恵まれた東日本大震災の「トモダチ作戦」の話をした。在院生の多くは震災発生当時は、小学生か、または中学生になろうとしている時期だった。彼らは大震災とトモダチ作戦についてあまり知らないようだった。

 初めに、「Arigato from Japan Earthquake Victims(日本の地震被災者からありがとう)」と題するビデオを放映し、困難な状況を克服し、さらにその後に生かしていくことの重要性を強調した。在院生に、この教訓を人として成長し前進するために生かし、人生の中で起きた悪いこと、自分がしてしまったことを良いものに転換していってほしいと訴えた。

 人間や組織間の関係がいかに重要で、日米両国の同盟関係のおかげで、米軍は素早く対応できたことを強調した。今の人間関係を大事にし、将来さらにその関係を強化していってほしいと話した。講演後の子供たちの質問の内容や顔の表情から、彼らは確実に理解しているようだった。

 院長の在院者についての言葉にも感銘を受けた。「在院生がここを離れる時、私たちに感謝をし、ここにいる時間が有意義だったと振り返ることができたのであれば、私たちの仕事はうまくいったと言える」と敬意を込めて話してくれた。

 講演後の質問からは、子供たちが深く考え、進んで貢献していきたいと思っていることが感じられた。これこそ筆者が望んでいた反応だ。後で、何通かの感想文を受け取った。いずれもよく考えて書かれたものだった。筆者と妻はこれらを読むうちに、こんなにも礼儀正しく、感受性豊かで、知的な若者たちがどうして少年院に入ることになってしまったのかと驚嘆した。

 日本には現在、52の少年院がある。今年1月の段階で、全国で2098人(男1938人、女160人)が在院している。

 以前から、少年院のほか、ろう学校、盲学校、心身に障害を抱える生徒が通う特別支援学校、特別養護老人ホームなどの施設を訪問したいと思っていて、これまでそのほとんどの施設訪問が実現した。こうした社会的弱者は最も助けが必要な人々だが、社会でしばしば忘れられる。しかし、彼らから学ぶことは非常に多い。

 在院生は自身の間違いや失敗を反省し、社会に再復帰しようと努力している。しかし、残念ながら、日本社会は彼らを容易に受け入れられずにいる。彼らを採用しようとする企業が少ないのはとても残念だ。学校、大学、企業など、より多くの組織が、彼らを可能性に富んだ社会の一員として認め、受け入れることを望む。絆とはすなわち、双方向の交流だ。

 労働人口の減少が深刻な日本がこうした男女を社会に再び迎えることは急務だ。国、都道府県、市町村区、さらに市民社会、民間セクター、そして言うまでもなく個人と家族、友人は、彼らのため、そして国家のために一緒に働かなければならない。

 少年院の職員とそこの少年たちと交流できたことを誇りに思う。それ以来、筆者は近畿地方の少年院3カ所を訪問した。そのうち1カ所は女子専用施設だ。また、今月上旬、予定していた研修会で、これら施設の責任者と職員の78人の前で講演する機会を頂いた。

 多くの企業の管理職、NGO、NPO、政治家を含めた筆者のネットワークを生かして、こうした若者たちが即座に社会に戻り、過ちを繰り返すことのないよう支援したいと思っている。講演の後、災害への備えや対応に関わりたいと話してくれた若者たちのように、読者の皆さんも、どのようにすれば、日本の希望になり得るこうした若い男女や施設を支援できるかを考えてくれることを望んでいる。