コロナ後のボランティアの在り方

エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

教育機関に義務付けを
参加者と地域社会双方に恩恵

ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表、政治学博士
 ロバート・D・エルドリッヂ

 春を迎え、例年なら世界各国で「ボランティア週間」が祝われる時期だ。地域サービス、献血、ビーチや路上の清掃など日頃のボランティア(奉仕)活動に感謝し、ボランティアすることの重要性を啓蒙するという内容だ。

 米国の今年のボランティア週間は4月19日から25日だった。世界各国は新型コロナウイルスCOVID―19の影響による「ステイホーム」と隔離政策の影響で、ボランティア週間の関連イベントに参加する人が限定されたことは想像するに難くないが、同時にこのパンデミックはボランティアの重要性を浮き彫りにした。ボランティアがいなければ、近隣の地域、学校、団体などのコミュニティーのほとんどは機能しないだろう。特に、行政サービスは予算削減や優先順位の問題でどんどん制限されている。

震災で真に重要性認識

 日本では1月15日から21日がボランティア週間となっている。正式には「災害とボランティア週間」と名付けられ、1996年から始まった。その1カ月前の95年12月15日に閣議決定された。同年1月17日に阪神淡路大震災が発生し、ボランティア週間はその日に合わせている。当然ながら、ずっと前からボランティア活動はあった。ただ、ボランティアの役割や一般人がボランティア活動をすることの重要性はその時に真に認識された。

 しかし、ボランティア活動は災害時だけにすることではないし、さまざまな理由で不運に見舞われたり、動揺したり、ストレスを抱えたりしている人々のためのものでもあってほしいと思っている。ボランティア経験があり、行動に責任を取り、リーダーシップを発揮し、注意深く忠実に指示に従う時に、ボランティアは効果的になる。ボランティアをフィットネスやスキル習得に例えれば、練習することで完璧に近づくのだ。

 こうした理由から、これまで以上に多くの人、いや、全ての人々がボランティアとなるのを見たいものだ。スキルの有無やレベルにかかわらず、誰でも何か得るものがある。なお、筆者が昨年11月7日付の英字紙、『ジャパン・タイムス』で提言したように、国が「国家規模のボランティア登録制度」を事前に作っておけば、いざという時、被災した地方自治体の業務負担が減り、ボランティアたちをより早く現場に派遣できる。

 これは特に若い世代に言えることだ。大学などの教育機関は週に1度のボランティア活動を奨励するか義務付けるべきだと思う。ただ、義務付けるべきは学生に対してではなく教育機関に対してである。若者は、関わりたい社会問題や活動を選ぶことで、社会的関心や地域社会への参画を強めることにつながる。

 日本学生支援機構による過去の調査では、日本人の学生は諸外国と比べてボランティアをしていないという結果が出た。授業やアルバイト、課外学習に忙しく、ボランティアに割く時間がないのが理由だ。従って、学校または学生が、平日または週末にボランティアのために時間を作れるよう義務化する必要性がある。

 毎週、何らかのボランティア活動をすることは自分自身にとっても、地域社会にとっても甚大な影響を及ぼす。参加者は新たなスキルを学び、新しい友達ができ、一定の満足・達成感を得るだろう。地域社会(近隣、学校、老人ホーム、NGOなど)が、コストのかからない労働による利益を得るだけでなく、その団体や地域での活動や福祉に関わっている人々にとっても恩恵をもたらすものであってほしいと思う。

最高の「良き隣人」政策

 会社や学校などの組織は、小学生の時からボランティア活動をするよう職員や学生に積極的に推進すべきだ。最高の「良き隣人」政策であり、企業の社会的責任の重要な柱となる。学校では、こうした活動で学力が向上し、生徒らが教室内外の活動や、自身の得意分野や関心事に意欲的に取り組むようになる。

 ボランティアは肉体的な健常者だけのものではない。介助を必要とする人を含め、誰でも自身の能力、見識、労働力を提供できる。これによって元気づけられ、新たな関係を築くことができ、社会とのきずなを深めることができるようになる。

 過去の大災害のように、新型コロナウイルスによるパンデミック(人災の側面もある)は、ボランティアがいかに重要かを世界に示した。ボランティア活動がやりやすく、誰もが参加できるよう、国家規模のムーブメントが起きるよう望みたいものだ。