皇位継承問題を考える

大月短大名誉教授 小山 常実

男系継承破れば日本分裂
別王朝への道を開く女性天皇

小山 常実

大月短大名誉教授 小山 常実

 令和への改元とともに、皇位継承の危機を説き、女性・女系天皇容認論に誘導する動きが強まっている。しかし、皇位継承の危機は確かにあるが、言われるほど強いわけではない。10年以上前に中川八洋氏が述べていたように、よほどのことがない限り、30年ほどは今の制度でも安泰だともいえる。あわてて女系容認につながるような制度を作るよりは、現状維持の方がよい。

 皇室問題よりも危ないのは、中国による侵略の危機だ。特に安倍政権の3期目が終わった後(安倍4期目があったとしても)が危ないように感じている。もっとも、トランプ再選の可能性が増しているから、侵略の危機は数年伸びるのかもしれない。ともあれ、日本国家が行うべき喫緊の課題は、この3年間何度も言ってきたように、第一に自衛戦力と交戦権を肯定する「日本国憲法」解釈を確立することだ。

男系継承は絶対原則

 それはともかく、皇位継承問題について続ければ、真っ先に言いたいのは次のことだ。皇位継承の第一原則、絶対原則は男系に属する者が継承するということであり、この原則を守り続けるには男子が継承する方がよいということである。第二原則は皇族である者が継承するということである。この二つの原則の順序を誤ってはならないと強く思う。

 女系容認論の人たちは、第二原則を重視して、その結果、第一原則を破って女系天皇が誕生してしまっても構わないと考えている。その時は、日本の危機が訪れる。いや、女系天皇が出てくる前段階である女性天皇が誕生したとたんに訪れる。女性天皇の配偶者が日本の権力者である場合、皇室がその権力者に壟断(ろうだん)される可能性が生まれる。外国人である場合には、国を乗っ取られる可能性が出てくる。王位継承をめぐって、外国人が乗り込んで国を乗っ取った例は、ヨーロッパでは本当に多くあることに注意されたい。乗っ取られなくても、王位継承をめぐる戦争は、数多く起きていることに注意されたい。

 そして、その女性天皇と日本人または外国人との子供が皇位に就けば、完全に別王朝が始まることになる。別王朝が始まれば、男系で正統な天皇を担ぐ勢力が当然出てくる。すると、日本国内が分裂していく可能性が高まろう。内戦にまで発展する論理的可能性は明確にある。

 国連人権理事会が、日本の左翼と中国に動かされて、毎年、日本の皇位継承は女性差別だと内政干渉し攻撃するのは、日本国内を分裂させる目論見(もくろみ)を持っているからである。国連理事会などは、慰安婦問題、在日韓国朝鮮人問題、ヘイト法、アイヌ先住民族論といった形で、日本を攻撃し屈服させてきた。その総仕上げが、女性天皇↓女系天皇↓別王朝↓内戦ないし外国による乗っ取り、といった流れを生み出す女系天皇容認論である。

万世一系で温和な支配

 実は、君主制は、共和制よりも温和な支配をもたらし、立憲主義、民主主義を発展させる。共和制は、君主制よりも、国内を分裂させ、暴力的、専制的な支配をもたらす傾向がある。例えば、20世紀に大量虐殺を行った国は、ほとんど共和制国家である。これらのことは虚心に史実に向き合えば分かることであるが、学校教育は決して教えようとしない。

 君主制の温和な支配は、西欧や日本でとられている権威と権力の分離の体制からくる。今日、共和制国家でも多くの場合、権威と権力の分離が一定程度行われているが、それは、君主制国家に倣ったものである。権力者は具体的な政策をめぐって国を分裂させるが、国を統合するのが権威の役割である。そういう権威としては、共和制国家の大統領より、君主制国家の君主の方が優れている。同じ君主制国家の中でも、王朝交代が行われる国の君主よりは、万世一系の国の君主の方が権威としてはるかに優れている。国民の歴史的一体感をより保障するからである。

(こやま・つねみ)