百害あって一利ない習主席「国賓」

拓殖大学国際日本文化研究所教授 ペマ・ギャルポ

孤立する中国救うことに
抗議活動の一層の拡大を期待

ペマ・ギャルポ

拓殖大学国際日本文化研究所教授
ペマ・ギャルポ

 2019年は日本にとって新しい年号の下、新しい天皇が即位され、大変おめでたい年となり、国内外がお祝いし、歴史に残る慶事となった。しかし一方においては豪雨、台風など自然災害が続き、人的物質的大きな損害を被った年でもあった。新しい天皇のご即位の式典には世界各国の王室をはじめ国家元首、政府の長および国連など国際機関の責任者たちがお祝いに駆け付け、日本が世界に対する重要な地位にあることを示した。

毅然とした首相の言動

 その日本が安倍晋三首相の積極平和外交の下、世界各国から安定した国家の、安定した政権のリーダーとして高い評価を受けている。日本は戦後さまざまな形で国際社会に貢献してきたが、残念ながら今までは首相としての任期が短く、諸外国からその人の業績を評価され、人物を理解されるには至らなかった。しかし安倍首相は憲政史上最長政権の名誉を獲得し、今後さらにこの記録を更新していくように見える。

 このたびの恒例の日中韓3カ国首脳会談における安倍首相の毅然(きぜん)とした言動も、日本の政治家としては堂々とし、自己主張を明確にされていた。正直に言って当初、恒例の行事とはいえ、この時期に3者会談に臨み、中国に出向くことに対しては一抹の不安が無かったとは言えない。しかし実際の会談の中身を見ると、言うべきことはきちんと言い、要求すべきことは明確に主張していた。韓国に対しても中国に対しても、内容としては一歩も譲っていない。むしろ習近平中国国家主席に対して今春の国賓としての日本訪問に当たり、それまでにクリアすべき課題を与えたようにも感じる。

 香港、ウイグルなど中国による人権問題についても、また日本に対する度重なる領海侵犯ならびに十分な証拠無しに日本人を不当逮捕している件などについても、面と向かって言及している。また韓国に対してこの地域の隣国として良好な関係を望みつつ、国際慣習に基づいて過去の条約などを尊重するよう求めている。

 もちろん北京政府はこの会議を最大限に利用している。中国共産党関係者および中国寄りの言論人は、アメリカができなかった日韓の関係改善に対する仲介役を北京政府が成し遂げ、この地域における中国のリーダーシップを発揮したと言っている。また北朝鮮問題に対しても、アメリカではなくて中国が結果的には日本と北朝鮮との間の橋渡しを担ったとも言っている。

 中国の思惑は、日米の信頼関係を破壊すること、日米韓の軍事的な協力を阻止することが当面の戦略であることは明確である。この立場から考えると、日本政府が習近平主席を国賓として迎えることは「百害あって一利なし」と言えるのではないか。中国は今、アメリカとの冷戦ではなく熱戦に入っているような状況で、同盟国日本が中国の国家元首を招き騒ぎ立てることは、アメリカをはじめとする自由と民主主義を尊ぶ国々や人々の気持ちを逆なでする行為であり、中国を国際社会における孤立から救うことになろう。

 幸い今、日本国内では各方面からこの国賓として受け入れることに反対する署名運動や意見が出始めているし、これからさらに幅広い抗議活動が展開するに違いない。日本政府が歓迎しても、国民は血で手を染めた独裁者を受け入れない、という意思表示をすることは大切である。

だんまり決め込む野党

 現職の国会議員がチャイナマネーを受け取ったとして逮捕されたことも、日本国民に中国の本質を知らせる小さなきっかけになるだろう。秋元司衆院議員は悪党であっても「小悪党」であり、日本国民は「大悪党」の存在に気付くべきであるし、特捜部にはこの際徹底して悪の根源を暴き出すよう一国民として願うばかりである。

 それにしても「桜を見る会」の一件であれだけ騒いでいた野党の皆様が、この問題にだんまりを決め込んでいるのは、自分たちにも中国から何らかの物が入って、口を開けない状況にあるのだろうか。

 最後に2020年が日本国にとって、皆様にとって良い年であるよう心から祈願申し上げたい。