中国の宗教弾圧、共産党による統制を許すな


 米国務省は世界各国の信教の自由に関する年次報告書を発表し、中国政府が新疆ウイグル自治区などでイスラム教徒らの弾圧を続けていると非難した。

 中国では共産党による宗教統制が進んでいる。信教の自由を認めず、宗教を弾圧することは断じて容認できない。

 米国が年次報告書発表

 報告書は、新疆ウイグル自治区の収容所などの施設で、100万人以上のウイグル人らイスラム教徒や一部のキリスト教徒が拘留されていると指摘。収容所では強制労働や拷問、強制不妊手術が横行するなど、収容された人たちは悲惨な状況に置かれている。

 中国の少数民族の一つであるウイグル人は独自の文化を持っている。イスラム教はその根幹と言っていい。宗教弾圧は少数民族の存在を否定することにほかならない。

 ブリンケン国務長官は「中国は宗教的表現を広く犯罪化し、人道に対する罪を犯し、イスラム教徒のウイグル人らにジェノサイド(集団虐殺)を続けている」と非難。また、法輪功メンバーを恣意(しい)的に拘束するなど弾圧に関わったとして、中国政府高官とその家族に米国入国を禁止する制裁措置を発表した。

 中国では2018年の政府発表によると、仏教、道教、イスラム教、キリスト教などの信者が約2億人、聖職者は約38万人に上る。憲法で信教の自由を定めているが、実態は宗教の「中国化」を掲げる共産党の厳しい統制下にある。

 中国で今月施行された宗教聖職者についての規則は「聖職者は、共産党の指導や社会主義制度を支持しなければならない」と明記。聖職者が「宗教の中国化を進める役割を果たす」ことも求めた。

 無神論の共産主義を聖職者に押し付けることは、宗教に対する冒涜(ぼうとく)であり、信教の自由への侵害以外の何物でもない。この規則の施行で、ウイグル人やキリスト教会などへの迫害が一層強まることが懸念される。

 中国は「テロ対策」を口実にウイグル人への人権侵害を続けてきた。それは「自治区全体を収容所に変えようとしている」(米国務省高官)と言われるほど徹底している。こうした状況を米国が「ジェノサイド」と認定したのは当然だ。

 新疆ウイグル自治区の面積は中国国土の約6分の1を占め、天然資源も豊富だ。ロシアや中央アジア諸国と国境を接し、巨大経済圏構想「一帯一路」の陸の要所でもある。中国は自治区を領土・主権に関わる「核心的利益」と位置付け、ウイグル人への同化政策を強化している。

 日本は批判を強めよ

 一方、国連では新疆ウイグル自治区での人権問題をめぐるオンラインイベントが開かれ、米欧が非難の声を上げた。中国は事前にイベントに参加しないよう国連加盟国に文書で求めていたが、主催者によると中国を含め40~50カ国が参加した。

 自民党外交部会は、自治区での人権侵害などを念頭にジェノサイド条約への加盟を検討するよう政府に求める提言を提出する予定だ。政府は中国の宗教弾圧や人権侵害に対する批判を強めるべきである。