守りたい伝統行事 心の教育に良いお正月

家族で迎える「年の神」

 伝統や風習、歳事や儀式が年ごとに薄れて行く昨今、年頭を祝う日本古来の「正月」行事の陰が薄くなってしまった。

 時代と共に移り変わることは仕方ないが、寂しい。

 正月はもともと、「年の神」を家へ迎え、豊作を祈る「神聖な日」で、大晦日(みそか)までには身も心も清めておかなければならなかったのです。

 年の暮れに門松や松飾りが門などに飾られると正月気分が盛り上がったものでした。しかし、特に都会ではほとんど見られなくなってしまいました。松が飾られるのは長寿の植物で縁起のいいものと尊ばれるからです。また、正月の食卓には、一年の邪気を払い齢を延ばすという屠蘇(とそ)や一つ一つの料理に意味があり、家族の繁栄と一年間幸せに暮らせるようにと願いがこもったお節(せち)料理がならび、初詣のあと津々浦々で家族団欒(だんらん)や一族再会の幸せを久しぶりにかみしめ、迎えた年の安泰と家の繁栄を祈念し祝ったものでしたが、現在では各自が好きなときに起き、好きな物を食すなど、日本人が長年続けてきた伝統的な習俗がなくなろうとしています。

 正月7日は「七種(ななくさ)(草)粥(かゆ)」を食べる日。といってもこれまた風習を今でも守っている家庭は少ないと思います。

 “ななくさなずな唐土(とうど)(中国)の鳥の日本の土地へ渡らぬ先に”または、“唐土の鳥と日本の鳥と渡らぬ先に、ななくさなずな手に摘み入れて”

 など唱え囃(はや)しながら叩き、粥に入れて食べる。古くは羹(あつもの)(肉・野菜を入れた熱い吸物)にして食べたといわれている。七種粥を食べたのは、野菜の乏しい冬に家の近くの野草を摘み、栄養を摂(と)り万病を防ぐということで、昔の人は季節ごとに旬のものを食べて自然の実りを楽しむという習慣があったのです。

 また、正月15日を小正月といい、これは旧暦の正月にあたり、米、麦、ひえ、小豆(あづき)ななどで粥をつくり食していたが、後に餅を入れた小豆粥となり現在にいたっており、これも邪気を除くといわれ、そのたきあがり方でその年の豊凶を占ったともいわれています。

 もっとも子供がよろこぶ「お年玉」の由来は神事に関係があるのです。

 神前に供える鏡餅は御祭神への供え物であり、そのおさがりの餅には御祭神の魂が込められていて、それを「御歳玉(おとしだま)」と呼んで、御祭神の加護をいただき、恙(つつが)なく新たな年を過ごすことができるようにという意味がこめられていたのです。そんないわれがある「お年玉」。「神様からの新しい生命力を目上の人を通して頂く」もので、金額ばかりが注目されるが、本来の意味を子供に認識させることが必要なのです。

 子供たちを中心とした、かるた双六・羽根つき・凧(たこ)あげといった正月の遊びも近年あまり見られなくなってしまったが、これらも人とのかかわりあいなど心の教育にもなっているのです。

大切な先祖からの知恵

 その年の潤いある生活は、家族同志の「おめでとう」の挨拶(あいさつ)から始まり、心をよせあう「ぬくもり」ある家庭から始まるのです。

 私たちの先祖が大切にしてきた知恵と考えに基づいて築きあげてきた多くの伝統ある行事や文化が忘れられつつあるが、まずは家庭から伝統ある行事を守り、後世に継承していかなければならないと思います。

 ともあれ、本年も良い年であることを願う。