「オール沖縄」の偽善を糺す
保守を詐称“有志の会”
背後に共産党の巧妙な戦略
衆議院選挙が騒々しくなると、何と来年11月の沖縄県知事選挙で、既に論理も戦術も崩壊している「オール沖縄」で翁長知事の再選をもくろむ保守・中道系の市町村議員有志の会が結成されると報道されている。有志の会の名称は「新しい風・にぬふぁぶし」。「にぬふぁぶし」は沖縄方言で「北極星」を意味する。衆院選の公示日の翌日の11日に発足し、翁長知事も出席する予定だという。
この有志の会は果たして、本当に保守系なのだろうか。保守とは、日本の美しい伝統、文化、安心安全を重んじ、清潔で人情にあふれ、皇室を中心に2677年の世界最古の国体を維持し、日の丸と君が代を尊敬する思想に誇りを持つ、という点から推測するに、失礼ながら有志の会の所属議員には「保守」を標榜(ひょうぼう)する資格はないと断言せざるを得ない。
そもそもリーダーとは、揺るぎない政治思想、理念、歴史観に基づく政策で地域・国家を善導していく使命がある。いたずらに大衆に迎合するのは有権者の御用聞きでしかないのだ。
しからば、共産党の巧妙な戦略戦術に牛耳られている「オール沖縄」という前提で、保守を偽っている皆さんに問うてみたい。
・憲法改正はどうするのか。
・日米安保体制と集団安全保障はどうするのか。
・天皇制についてどう考えるか。
・共産党が主唱する自衛隊の解体論に賛成なのか。
・北朝鮮の眼前の核の脅威にどう対抗するのか。
・恨み節で日本との約束を守らない韓国とはどう付き合っていくのか。
・覇権国家として急速に登場してきた中国が南シナ海における制海権・制空権を確実かつ強引に自分のものにし、次は尖閣諸島の海底資源を念頭に沖縄を明国と清国の時代に戻すとの中国共産党の公式見解があるが、尖閣諸島を含めた日本領海内に連日のように不法侵入を常態化させている現実にどう対応するのか。
・翁長知事や琉球独立論者たちは中国に対し、一言も遺憾の意思表示もない。琉球独立論者は中国の言動を歓迎しているかのような発言もあるのだが、これについてはどう考えているのか。
さて、「オール沖縄」にくみしようとしている皆さんに問いたい。米海兵隊の普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設が頓挫すれば、普天間飛行場の固定化は必至となる。その結果、嘉手納基地(嘉手納町、沖縄市、北谷町)以南の米軍基地(およそ25%)の返還も停滞するのは明白である。その結果、日米間のSACO(沖縄に関する特別移動行動委員会)合意に反対することになり、那覇軍港の浦添沖への移設も難しくなる。
那覇空港は、全日空とクロネコヤマトの努力で、今やアジアの空のハブに急成長した。松本哲治・浦添市長は、那覇軍港の返還と浦添西海岸地域への移設を実現し、ハワイを追い抜く夢の開発と海のハブ化の壮大なロマンに強力に取り組んでいる。そして普天間飛行場の跡地利用が実現すると、都市部にある那覇軍港、キャンプ・キンザー(浦添市)を含めた跡地利用の経済波及効果は現在の数百倍になると、富川盛武副知事らは試算する。このままでいくと、アジア経済発展のトップランナーの沖縄の夢は単なる絵空事になるのではと危惧(きぐ)せざるを得ない。
保守とうたっている有識者に今一度、申し上げる。共産党の戦前のコミンテルン、マルクスレーニン主義、唯物史観、暴力革命のテーゼと歩みを勉強してほしい。特に、昨年の国会で鈴木貴子議員の質問に対して公安調査庁は、いまだに共産党は「現在においても、破壊活動防止法に基づく調査対象団体である」と答弁している。事実を学ぶべきだ。
県外移設も二十余年、移設先も探し切れない。現に、反対派は何もしていない。海兵隊の普天間飛行場を5年以内に閉鎖しろという革新左翼のアピールは昨今のアジア軍事情勢と中国の狙いを予知し得ない愚論でしかない。
9月1日付の琉球新報の見出し「基地対策予算に影響 国直轄増」「県の自主性後退」などの記事を読むと、故大田昌秀知事が米軍用地特措法と辺野古移設をめぐって故橋本龍太郎首相、野中広務官房長官、鈴木宗男総務会長と首相官邸で17回も懇親の会話を持ち、自民党と政府に期待をさせておいた。ところが、やさしいが義理仁義の武士道に欠ける沖縄の人に「土壇場で後ろ足で砂を掛けられた」(野中)のだ。
その結果、自民党、政府と沖縄県は信頼関係が崩壊し、ほとんどの政策、経済振興会議も開けなくなり、本県の経済界が結集し、「危機突破県民会議」を立ち上げた。ほとんどの経済人、政治家が打倒・大田県政で結集し、稲嶺恵一氏を担ぎ出し、圧勝。以来、16年間、保守県政が続いた。今はその危機的状況に似ている。
経済界はあの時ほどの結束は期待できない。今年4月のNHK世論調査によると、復帰後の世代は65%が米軍基地を容認している。若い世代は「本土にいじめられた」などというヤマトンチュー(本土出身者)への違和感はほとんどないし、自虐史観もない。
地元メディアのすさまじい世論誘導との闘いが続くが、保守系は次の県知事選で翁長知事に対抗できるだけの政治風土をつくることが必要だ。
(にしだ・けんじろう)