海保が尖閣専従部隊 、漁船体当り事件後志願者急増
第2部 自衛隊配備へ動く石垣島(2)
中国は尖閣諸島を「核心的利益」、すなわち自国領と主張し、海警局(中国コーストガード、日本の海上保安庁に相当)の公船を尖閣周辺に長時間居座らせるようになった。これに対し昼夜を分かたず警戒に当たるのが海上保安庁だ。
「領海警備は一義的には警察機関である海保が行う。制御が不能になると自衛隊の出番になる。軍対軍の(交戦)状態にならないように未然に防ぐのがわれわれの任務だ」と石垣保安部の宮﨑一巳部長は強調する。
そのための細心の警備活動と周到な準備は欠かせない。同保安部の巡視船に、中国語、ロシア語、韓国語が話せる国際捜査監を必ず乗船させるのも、いざという時にコミュニケーションができず、不要な衝突を避けるためである。
石垣保安部は第11管区(那覇)の直轄だ。今年2月、尖閣諸島周辺での緊張感が高まり続けることを受け、尖閣領海警備に専念する「尖閣専従部隊」を発足。1000㌧級10隻、ヘリ搭載型2隻による12隻体制となった。
4月には、石垣港に6隻が同時係留できる専用桟橋や船艇用品庫を整備。職員も約500人増員され、689人の大規模な保安部となった。尖閣諸島の国有化後、領海警備で全国の他管区から巡視船などの応援を受けていたが、それ以後は不要となった。
宮﨑部長は、「ようやく地域のニーズに合う業務ができるようになった」と胸を張る。中山義隆石垣市長も、「精神的な部分では安心感がある」と歓迎する。
尖閣専従部隊として増員された職員のほとんどは志願者。中国の公船と海上で対峙(たいじ)する過酷な任務にもかかわらず、「非常に士気が高い」(宮﨑部長)という。確かに同保安部で働く職員の輝いた目、非常にきびきびした動きが印象的だ。
宮﨑部長によると、10年前は、海保の活躍を描いた映画「海猿」に影響されて入ってきた職員が多かったという。ところが、10年9月、尖閣諸島沖で海保の巡視船が中国船に体当たりされた事件が起きて以来、尖閣諸島を守りたいという志を持って入ってくる人が増えた。
ただ8月中旬、中国船が200隻以上接続水域を航行。中国の「海警」「海監」「漁政」といった公船18隻も集結。その際、石垣保安部挙げて対応したが「あれだけの大挙は想定外だった」と関係者は焦りを隠さない。
毎朝、石垣埠頭をサイクリングしながら海保の巡視艇の出発するのを眺め活躍に期待する八重山防衛協会の三木巌会長だが、「中国の造船技術は日本を真似(まね)て、年間2、3隻の軍艦を造れる能力を持つようになった。海保の存在は大きいが、それだけでは尖閣防衛に限界がある」と指摘する。石垣島では今、自衛隊配備の声が強まっている。
(那覇支局長・豊田 剛)