離島軽視の翁長県政、考え違う自治体露骨に冷遇
第2部 自衛隊配備へ動く石垣島(6)
中山義隆石垣市長は6月17日、宮古島市の下地敏彦市長、八重山市町議会議長会長の知念辰憲会長(石垣市議会議長)と共に沖縄県庁を訪れ、尖閣諸島における漁業者の安全確保と監視・警備体制の充実について国に働き掛けるよう求めた。
要請時、翁長雄志知事は不在だった。中山氏は、安慶田光副知事に対し、「県知事としても明らかなメッセージを発してほしい」と訴えた。
中山市長は翁長氏が尖閣諸島に対して何らメッセージを発しないことが不満なのだ。「(翁長氏の)離島に対する思いを肌で感じられない」と話すとともに、「仲井真(前)知事は、行事、災害など何かあるたびに離島を訪問した。漁業者の声も直接聞いた。今の県政は離島に心配りができていない」と厳しい。
その翁長氏が7月21日、首相官邸で開かれた「政府・沖縄県協議会」で、八重山の地域住民の安全確保に向けて万全の態勢で取り組むよう菅義偉官房長官らに要請した。翁長氏が中国船への対応を政府に要請するのは初めてのことだった。
「さすがの翁長氏も石垣市長の要請を無視できなかったな」
自民党県連幹部は、翁長氏がようやく重い腰を上げて要請をしたことに半ばあきれた表情で語った。
石垣市議団も県に対して要請行動をしたが、県のぞんざいな扱いに憤りを覚えている。6月29日、同市議団が石垣の漁業者の安全操業に向けての取り組みを求める要請で県庁を訪れた際、知事、2人の副知事は姿を見せず、担当職員が代わりに要請を受け取った。しかも、通された部屋は、書類で埋もれた倉庫のような部屋だった。
翁長氏を支持する革新系「オール沖縄」と考えが違う自治体に対する県の冷遇はある程度、予想されていたが、「ここまで露骨とは」と、石垣市議たちは唖然とした。
これに対し、前日に市議団が上京した際には、政府は菅官房長官、島尻安伊子沖縄担当相(当時)らが対応。外務省、国交省、海保の幹部職員も同席した。参院選の忙しい時期にもかかわらず厚遇してくれたことに市議団は政府の尖閣防衛重視の姿勢を強く印象付けられたと言う。
県の文教厚生委員会所属議員が8月に石垣島を視察した際、県はもっと離島に目を向けるべきではないかと問い詰められた狩俣信子委員長(社会大衆党)は、「知事は裁判で忙しくて時間がない」と釈明したが「県民不在」の県政を露呈する格好になった。
石垣市選出の砂川利勝県議は、県政は「離島軽視」だと断じ、不満をこう口にする。
「翁長知事ら『オール沖縄』陣営の離島軽視の姿勢は顕著だ。知事は就任してから2年近くがたつが、3度の米国訪問を含め、何度も外国に行っている。しかし、いまだに一度も訪れていない離島地域がたくさんある。離島の状況を把握しようともしていない」
昨年、歴史的な台風被害を受け、今年3月に陸自駐屯地が完成した与那国島にも一度も訪れていない。
「沖縄本島でも、浦添市、宜野湾市など多くの場所を一度も公式訪問していない。行かないと分からないことはたくさんあるはず。現実から逃げているようでは首長として失格だ」と砂川県議は批判のボルテージを上げた。
(那覇支局長・豊田 剛)






