西表島拠点の防災訓練 、反対活動家の姿は一切なし

国防最前線・南西諸島はいま
第2部 自衛隊配備へ動く石垣島(5)

 沖縄県主催の総合防災訓練が9月3日、石垣島から25㌔離れた西表島(竹富町)で行われた。八重山諸島南西沖で地震が発生し、それに伴う津波が襲うという設定。防災訓練は総合本部が設置された西表島を拠点に、石垣島、竹富島、小浜島、鳩間島、黒島、新城島、波照間島といった八重山諸島の広域が舞台になった。

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西表島の大原港に上陸する海上自衛隊のエアクッション艇「LCAC(エルキャック)」

 西表島のメイン会場では、震災によって倒壊した家屋の片付けや土砂に埋もれた車両の救出作業が、洋上では津波で流された人をヘリで救出する訓練も行われた。

 訓練は県、地元自治体、消防、警察、海上保安庁、病院、電力などインフラ関連企業などが参加したが、最も大所帯で参加したのが自衛隊で、那覇駐屯地の陸海空の3隊から約420人が参加し、離島統合防災訓練を行った。

 離島を津波が襲った場合は、被災者の避難場所の確保や負傷者の応急処置が難しい。今回の訓練で圧倒的な存在感を示したのが海自の輸送艦「おおすみ」だった。西表島の沖合に停泊していた「おおすみ」には自衛隊や海保のヘリが緊急患者を乗せて次から次へと着艦。患者を重症度、緊急度などによって分類して、艦内の治療室で応急治療をする流れを確認していた。

 「おおすみ」は人員輸送も任務の一つとして設計されているため、最大で1000人を収容できる。八重山の離島人口を抱えるには十分な能力を持つ。

 訓練に参加した西表島出身の70代の女性は、「離島には総合病院がない。いつ何時、何があるか分からない。自衛隊がそばにいれば安心感がある」とうれしそうに話した。

 沖縄本島で輸送艦やエアクッション艇「LCAC(エルキャック)」などの自衛隊の主要装備が参加して訓練する場合、決まって革新系市民団体が抗議活動を行う。石垣島や宮古島では、自衛隊が演奏会を開くだけでも反対運動が起きる。

 ところが、今回の避難訓練では自衛隊が圧倒的な存在感を示したにもかかわらず、西表島には反基地の活動家の姿は一切なく、反対のスローガンが書かれた横断幕もなかった。 石垣出身の予備自衛官の女性は、「自衛隊の人道支援活動が認知されるようになったからではないか」と島民意識の変化を指摘した。

 訓練には河野克俊統合幕僚長の姿もあった。河野氏は、LCACが水しぶきを上げながら港に上陸する様子を見て喜ぶ子供たちの姿を見ながら、満足そうな表情を浮かべていた。

 記者(豊田)の質問に対して、河野統合幕僚長は「国境に近い竹富町で統合訓練ができたことの意義は大きい。今後、県との連携を強化していくことが大切だ」と強調した。

(那覇支局長・豊田 剛)