私用メール問題、クリントン氏に隠蔽疑惑
「闇」に迫るFBI再捜査
米大統領選で独走状態にあった民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官が、私用メール問題に対する連邦捜査局(FBI)の捜査再開をきっかけに、共和党候補ドナルド・トランプ氏に猛追される展開になっている。スキャンダルが絶えないクリントン氏の「闇」が再びクローズアップされたためだ。
2日、米ネバダ州ラスベガスで開かれた大統領選の集会で演説する民主党候補ヒラリー・クリントン氏(AFP=時事)/caption]
クリントン氏が長官在任中、国務省のメールではなく、自宅にメールサーバーを設置して私用メールを公務に使っていたことが問題視されるのは、機密情報を軽率に取り扱ったからだけではない。より根深い問題は、なぜ私用メールを使っていたかだ。
クリントン氏は利便性を理由に私用メールを使っていたと説明しているが、それを信じる見方はほとんどない。国務省のメールでやりとりすれば、公的記録としていずれ公開されることになるが、自らメールサーバーを管理していれば、公開したくないメールは消去できる。つまり、クリントン氏は他人に見せられないやりとりを隠蔽(いんぺい)するために私用メールを使っていた可能性が高いということだ。実際、クリントン氏は個人的なメールだとして3万3000通のメールを消去している。
では、クリントン氏は何を隠蔽しようとしたのか。これは、家族で運営する慈善団体「クリントン財団」をめぐるやりとりだったとの見方が強い。
ピーター・シュワイツァー氏の著書『クリントン・キャッシュ』は、クリントン財団に多額の献金をした外国政府・企業にクリントン氏が国務長官の立場を利用して便宜を図ることを繰り返し、私腹を肥やした実態を暴いている。同書は大きな注目を集め、映画化までされた。
保守派の論客チャールズ・クラウトハマー氏も「財団は慈善団体を装った巨大なファミリー企業だ」と指摘。クリントン財団をめぐる「ダーティー・ビジネス」を隠すために私用メールを使っていたというのが同氏の見方だ。
クリントン氏がスキャンダルで批判を浴びるのはこれが初めてではない。アーカンソー州知事夫人時代の「ホワイトウォーター疑惑」に始まり、ファーストレディー時代の「トラベルゲート」「ファイルゲート」、そして国務長官時代の私用メール問題、クリントン財団に絡む便宜供与疑惑と、クリントン氏のキャリアはスキャンダルまみれといっても過言ではない。
メール問題に対するFBIの再捜査が、クリントン氏のダーティーな過去に対する有権者の反感を呼び覚ましたことは否定できない。
(ワシントン早川俊行)