地元2紙の「政治支配」、基地推進候補に個人攻撃

国防最前線・南西諸島はいま
第2部 自衛隊配備へ動く石垣島(7)

 過去2年間、沖縄県で実施された市長選を除く主要選挙は、革新系候補が勝利を収めた。2014年11月の県知事選では翁長雄志氏が初当選。その翌月の衆院選は、沖縄の四つの全小選挙区で革新系候補が勝利した。

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石垣市登野城漁港にある「尖閣列島開拓記念碑」

 今年に入ってからは、6月5日に投開票された県議選で知事派の革新系議員が過半数を維持。翌月10日の参院選では沖縄担当相だった島尻安伊子氏が元宜野湾市長の伊波洋一氏に敗れた。

 こうした選挙結果を後ろ盾に、翁長氏は「オール沖縄」を強調。普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沖に造らせないという「辺野古新基地反対」の民意は「県民総意」だと主張している。普天間飛行場移設問題では国との裁判にまで発展。国対沖縄県という図式が出来上がっているかのように見える。

 ところが、離島は事情が全く違う。

 前出の主要選挙はすべて、保守陣営が勝利を収めた。石垣市では衆院選、参院選ともに保守系候補の得票が上回った。翁長氏の強さが目立った県知事選でさえ、南西諸島の全市町村で仲井真弘多氏の得票数が上回ったのだ。

 同じ沖縄県内で、どうしてはっきり分かれているのか。石垣市で発行する八重山日報の仲新城誠編集長は、「八重山・宮古地方は2紙(琉球新報と沖縄タイムス)のシェアがほとんどないからだ」と断言し、こう続ける。

 「14年の知事選以降、マスコミによる政治支配に近い状況にある。沖縄2紙は基地推進候補には個人攻撃を加え、辺野古移設は『道徳悪』であるかのようなイメージを広げ、辺野古移設を掲げる候補は勝てないような構図を作り上げている」

 仲新城氏は基地反対ばかりを叫ぶ革新政治家は離島のために何をしてくれたのだろうかと疑問を抱く。

 昨年9月にスイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権理事会を取材した時に「沖縄2紙は県政と一体化している」と確信したという。

 ジュネーブを訪れた翁長氏はサイドイベントとして開かれた辺野古移設反対を訴えるシンポジウムに琉球新報の潮平芳和編集長が登壇し、「知事と全く同じようなメッセージを発していた」。沖縄タイムスの記者も似たようなメッセージを発した。「一心同体となっていれば、県政批判ができるはずがない」(仲新城氏)というもの。

 沖縄2紙は、連日のように米軍基地問題が1面トップをにぎわす。200隻以上の中国漁船が接続水域に入った時には、独自取材を行わず、通信社の配信記事で済ましている。

 「基地反対の集会では何十人もの記者を送り込むが、尖閣問題を担当する記者は置かない」(同氏)

 砂川利勝県議は「辺野古に基地を造ることは差別だと主張しているが、マスコミの姿勢こそ離島民に対する差別ではないか」と強調した。

(那覇支局長・豊田 剛)

(終わり)