尖閣諸島 日本は防衛に万全を尽くせ
日本政府は1895年、どこの国も統治したことのない尖閣諸島を先占と呼ばれる国際法上の法理手続きに基づき、わが国の領土として沖縄県八重山郡(現在は石垣市)に編入した。当時、尖閣をめぐる帰属争いが起きることはなかった。尖閣が日本の領土であることは明らかであり、尖閣をめぐる領土問題は一切存在しないのである。
中国海警船の活動過激化
ところが1960年代後半、尖閣周辺海域に海底資源埋蔵の可能性が指摘されるや、突然中国が領有権を主張し始めた。78年には中国漁船団が尖閣海域に大挙押し寄せ、92年には尖閣を中国領と定めた領海法を施行。日本が2012年に尖閣を国有化して以降、尖閣周辺海域への中国海警船の進出が常態化し領海侵犯件数も急増。海警船の大型化・武装化も進めている。
こうした中国の動きに日本はその都度遺憾の意を表明し、抗議を重ねてきた。尖閣が日米安保条約第5条の適用範囲に含まれるとの声明を米政府から引き出し、尖閣防衛に対する米国のコミットメントの明確化にも努めている。
しかし、中国船の行動は収まるどころか逆に過激化し、日本漁船に危害を及ぼしかねない状況も生まれている。今月4日、尖閣周辺での中国海警船の活動が112日連続で確認され、過去最長となった。
この事態について中国外務省の汪文斌報道官は、釣魚島(尖閣の中国側名称)は中国固有の領土との主張を繰り返した上で、尖閣周辺海域でパトロールや法執行活動を展開することは中国の正当な主権行使だと強弁し、日本に自制を求めた。
領土拡大のためには力による現状変更も厭(いと)わない中国の前では、数多の抗議声明も無力である。習近平政権は南シナ海などと同様に尖閣を中国の「核心的利益」と捉えており、台湾への武力侵攻に当たり尖閣の確保が作戦上不可欠なことからも、奪取に向けて今後ますます攻勢を強めてくることは間違いない。
日本は巡視船の増強など海上保安庁の能力向上や自衛隊による海上警備行動の実施検討など尖閣防衛策の強化に取り組んでいる。それは評価できるが、日本が一段敷居を上げれば中国も敷居を一段上げることになり、こうした施策だけで中国の動きを封じることは難しい。中国海警船の遊弋や領海侵犯の常態化をこれ以上許せば、中国が尖閣を支配しているかのような誤った印象を世界に与えかねず、ありもしない尖閣の領土問題化が持ち上がる恐れも高い。それこそが中国の狙いである。
罠(わな)に陥らぬため、日本は尖閣防衛の諸施策を急ぐとともに、尖閣への行政標識設置や港湾施設の整備、人員の常駐化に着手し実効支配の態勢を強め、尖閣が日本の領土であることを明確に示すべきである。
事なかれ主義に堕するな
尖閣を守り抜く決意を見せることも必要だ。法と秩序を無視する中国には、今や世界中から非難の声が沸き起こっている。わが国も尖閣防衛に毅然(きぜん)とした態度で臨む時だ。中国の反発や報復を恐れ、事なかれ主義に堕していては領土を守り抜くことはできないのである。