「虫が苦手」を克服へ、小学校教員たちの挑戦
東京都武蔵野市の井の頭自然文化園で「虫」セミナー
「虫」をテーマに、小学校教員を対象としたセミナー「身近なムシの調べ方・よび寄せ方」が7月25日、井の頭自然文化園(東京都武蔵野市)で開かれた。セミナーでは昆虫採集の実習や集めた虫の分類についての講習が行われた。(石井孝秀)
教師の自然や生き物への姿勢が子供たちに影響
昆虫採集の実習や集めた虫の分類について講習
小学校では生活科や理科などの授業で虫を扱うことが多い。参加した教師たち約30人の中には、児童の虫嫌いに悩む教師や自ら「虫が苦手なんです」と話す教師も。
セミナーの講義では、小学生が体験教育をする上で、虫は優れた教材であると紹介。その理由として①児童にとって出合う機会が豊富②サイズが小さく手に乗せて観察できる③教室で飼育できる④季節ごとの変化が特徴的――といった点が挙げられた。
司会を務めた動物解説員の山崎彩夏さんは「先生という存在は子供にとってはキーパーソン。虫を触る体験などを学校で実践しても先生が手を出すかどうかなどのしぐさを子供たちは見ている」と指摘。教師の自然や生き物への姿勢が、子供たちの自然体験や価値観づくりに大きな影響を与えると強調した。
講義後に教師らは同園の中を散策しながら昆虫採集にも挑戦。園内の花壇や草の茂み、木の根元、原っぱなどに到着すると、参加者たちは「ここにいるかも」「あそこにいた!」と、夢中になって探し始めた。中には同時に何匹もカップに収めてしまう“達人”やアリジゴクなどのレアな虫を発見した人も。また、スズメガの幼虫など大物を捕まえた参加者の周りには「見せてください」「すごい」と人が集まり、カップの中の虫に熱い視線を注いでいた。
そんな童心に帰って虫を探す教師たちを見て、園に遊びに来ていた子供たちまでが「僕も虫を捕まえたい」と飛び入り参加。ぴょんぴょん飛び跳ねるバッタや素早いカマキリを参加者と一緒になって追い掛ける場面もあった。
この時、採集用の道具として手渡されたのは、虫捕り網ではなく透明なプラスチックのカップ。これを虫の上からかぶせて採集し、後で調べやすいように捕まえた場所などのメモをカップに張り付けるのが採集の方法だ。
スタッフの説明によると、子供が虫捕り網を使う場合、体が小さいためにうまく扱い切れず、無理やり振り回して周囲の子供にぶつけてしまう危険がある。透明なカップを使えば虫に気付かれにくく、また虫が苦手な人でも直接触らずに採集や観察ができるというメリットがある。
約1時間の実習で、チョウチョ、ハサミムシ、テントウムシ、ミツバチなどが入ったカップがズラリと並んだ。今回、捕まえた虫たちの傾向として、成虫になり切っていない個体が多かった。普段なら成虫になっていてもおかしくない時期だが、今夏の日照時間の少なさから成長が遅かったようだ。図鑑に掲載されている虫は成虫の姿のみのため、成虫になっていない虫を調べるのは難しい。
採集した虫の種類を絞り込むため、セミナーではセミ目(もく)、コウチュウ目、トンボ目など約30ある「目」というグループに分ける作業が行われた。「目」というグループならば見ためで判別しやすく、教師たちは図鑑や虫眼鏡を使いながら、「これはかむ口があるからハチやアリの仲間かな」「後ろ足が太くて長いからバッタ目だ」と、口や手足の形状などを手掛かりに仲間分けに取り組んだ。
都内の私立小学校で理科の授業を教えている杉村健人さん(24)は、「以前授業で昆虫採集をして子供たちが見つけてきた虫がどんな虫か、うまく答えられなかった。セミナーで図鑑の使い方を教わり、とても参考になった」と語った。
このほかセミナーでは、虫などの生き物を身近な場所に集める工夫について講義もあった。すぐにできる簡単な取り組みとして、土の上に落ち葉を積み上げたり、丸太を設置するなどの方法が紹介された。







