「やみくもに間口狭めないで」

北海道教委 石狩管内の公立高等学校配置計画検討協議会

 近年、人口減少が続く中、公立高等学校は学級減や学校の統廃合を余儀なくされている。高等学校の卒業生は、次世代の地域を担う人材となるだけに、高等学校の配置計画には、おのずと関心が高まる。北海道教育委員会(以下、道教委)では毎年定期的に14管内(道庁の区域別出先機関の管轄区域)で公立高等学校配置計画の地域別検討協議会を開催しており、このほど2019年度の石狩管内の同協議会が開催された。(札幌支局・湯朝 肇)

学級削減・再編にPTAから要請
遠隔授業など新たな取り組みも紹介

「やみくもに間口狭めないで」

4月26日に開かれた石狩管内の公立高等学校配置計画地域別検討協議会

 「中学校卒業者数が大幅に減少する一方で、グローバル化や情報化が進んでいる昨今、進学を希望する生徒や地域社会のニーズに応えた配置計画を策定していきたい」――4月26日、石狩管内の平成31年度第1回公立高等学校配置計画地域別検討協議会で、岩渕隆・石狩教育局長は平成31年度(令和元年度)から令和3年度までの基本的な指針を、各市町村の教育担当者に、このように訴えた。

 道教委では中学生の早い段階での進路選択に支障が出ないようにするため、毎年3年間の具体的な配置計画と、その後の4年間の見通しを提示している。仮に急激な中学校卒業生の増減や生徒の進路動向の変動が生じた場合、必要に応じて計画を変更していくことにしている。

 この日の協議会では、同管内の各高等学校PTA関係者向けの説明分科会に加えて、市町村の教育委員会や高等学校校長などへの説明があった。その中で同教育局の今村ちぐさ主査は北海道の高校教育を取り巻く環境を説明、「ここ40年間を見れば、中学校卒業者数は昭和62年度(9万2222人)をピークに減少傾向が続き、昨年度は4万4276人とピーク時に比べ半減している。さらに令和4年度には4万1859人にまで減少することになると見込まれる。高校の小規模化は避けられないが、そうした中であっても活力ある教育活動を展開するための取り組みを講じていく必要がある」と指摘する。

 原則として1学年2学級以下の公立高等学校は再編整備の対象とするとしているが、地域の地理的な状況などから再編が困難な場合は、特例校としての存続を図るとしている。ちなみに道教委の報告によれば、平成30年度に募集した定員よりも最終的に40人以上の欠員が生じて学級減となった公立高校は26校に及ぶ。

 公立高等学校においては、適正配置および教職員定数が法律で定められており、生徒数が減少すれば、法律に従って学級削減あるいは再編を行わざるを得ない。当然、教師の異動、削減にもつながっていく。

 もっとも、学校再編のメリットとして道教委は、①生徒にとって多くの教師や生徒と出会うことによって切磋琢磨(せっさたくま)する機会を与えられる②学習ニーズに応える多様で柔軟な教育過程が構成できる③生徒会活動や部活動が活性化する――といった点を挙げる。

 その一方で、デメリットとして、①遠距離通学など経済的・精神的・肉体的負担が増加する②学校選択の幅が縮小する③地域振興や地域経済への影響が出る――などの懸念材料を指摘する。

 4月26日の石狩管内の地域別検討協議会にはPTAや各学校長など80人ほどの教育関係者が参加し、活発な意見や要請が出された。千歳北陽高校PTAの生杉泰志会長は、「千歳市は北広島市や恵庭市などに隣接した街で、いわゆる道央圏を形成している。人口減少も緩やかで、高卒者の就職率も高く地域活性化の人材として期待されている。そうした状況の中でやみくもに高等学校の間口を狭めるようなことはしないでほしい」と語る。

 また、「道教委は今後、特色ある学校づくりのために基礎的・基本的な知識・技能の確実な定着を図るとしているが、具体的にはどういうイメージを描いているのか」(当別町教育委員会)といった質問が出た。

 募集定員を含めた公立学校の配置計画は、中学生の進路ばかりではなく道内の私立高校の学校運営にも関わる重要な案件だけに同検討協議会には私立中学・高校の関係者も参加。また、この日は地域の小規模校と都市部の高校の双方向の遠隔授業や地方の小中学校、高校が連携・協働し地域のニーズに取り組んだ実践研究も紹介されるなど新しい学校の取り組みが披露された。