宿泊型の公立フリースクール 不登校の児童生徒を支援
全国で14万人を超す小中学校の児童生徒が不登校となっている。こうした中、秋田県北秋田市にある「あきたリフレッシュ学園」は、宿泊型の公立フリースクールとして、年間20人弱の児童生徒を受け入れている。四季折々の自然体験と、ほぼマンツーマンの学習指導が特色で、約8割の子供が学校に復帰している。平成29年度の中学3年生は全員高等学校へ進学。これまで大学へ進学した卒園生も多い。中には「暗闇の中での一条の光」と語る生徒もいる。(伊藤志郎)
北秋田市「あきたリフレッシュ学園」
学校復帰率は約80%
文部科学省の発表では、29年度の全国の不登校児童生徒数は、小学校が約3万5千人、中学校は約10万9千人。20年度以降は減少傾向が続いたが、25年度以降は増加に転じている。
不登校の児童生徒に対しては在籍校の取り組みや各自治体が適応指導教室を設置しているが、北秋田市の宿泊体験型の「あきたリフレッシュ学園」は、秋田の大自然の中で、自分の考えた時間を過ごしながら、心と体のリフレッシュを図る場を提供している。
同学園は、秋田県教育委員会が20年6月に「山村留学」の経験がある北秋田市の「合川学童研修センター」内に開設した。同教育委員会の事業は27年度で終了したが、その後は北秋田市教育委員会が事業主体となり運営している。
開園後の利用者数は31年度までに103人で、秋田県91人(うち同市31人)の他、青森、岩手、宮城、福島、千葉、兵庫、東京の各都県から利用があった。学園在籍中は学校の出席日数にカウントされる。
運営体制は、秋田県教育委員会からの派遣社会教育主事が学園全般の運営・指導に当たり、31年度には同市の指導員(教員経験者)3人、ALTコーディネーター1人、同県教育庁北教育事務所の社会教育主事1人も運営に関わる。
また24年度からは、長期社会体験研修のため通年で小中学校教員1人を研修員に受け入れてきた。北秋田市立阿仁中学校の木村良子教諭はその一人で、「授業や友人関係の自己評価に基づき一人一人に効果的な指導を行います。分かること、できることを増やすことで学習が楽しくなり意欲が向上していきます」と語る。
学園での一日の活動スケジュールは、朝6時起床、9時教科学習指導(自己選択)、午後からは体験活動。そして、夕食後、テレビは時間を決めて視聴し、読書の時間も設けている。就寝は22時。携帯電話の使用は禁止だ。
児童生徒たちには、規則正しい生活をしながら、一日の活動計画は先生たちと話し合って自己決定させる。そうして、「分かった」「できた」という達成感を積み重ねることで、次への意欲へとつなげていく。学習は元教員らがほぼマンツーマンでサポートする。
体験活動も大きな魅力だ。山菜やタケノコ採り、魚釣り、サイクリング、ザリガニ釣り、トレッキング、農作業、渓流歩き、カヌー、きりたんぽ作り。冬はスキー、除雪など盛りだくさん。
このような指導の結果、学校復帰できた児童生徒は70%台後半から90%台で推移。「学園は、僕が暗闇の中で見つけた一筋の光でした。先生方と友だちのおかげで今の自分があります」(中学生男子)、「中学校で3年間お世話になりました。苦しい時や辛いときは、指導員の先生に励まされたこと、悩みを聞いてもらったことを思い出し頑張っています」(福祉系の大学3年生、20歳女子)。卒園生からは感謝の手紙が寄せられている。
経費は、北秋田市外の子供は利用料が1日700円(宿泊費・光熱費・保険料・クリーニング代)で、食事負担金は宿泊3食の場合が1500円。短期から長期まで対応し、随時見学を受け付けている。