世界各地で全体主義が台頭

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 第2次世界大戦以降のどの米大統領も、反政府勢力や内乱を支援するために、極秘で介入を行っていた―。フロリダ州タンパ近郊の特殊作戦軍にある統合特殊作戦大学が行った調査報告で明らかになった。

 報告書「抵抗運動への支援―戦略的目的と効果」は、過去70年の間に、アジア、欧州、南米、アフリカで行われた破壊活動、威圧作戦、政権転覆など米国の47の極秘作戦を分析している。

 報告書を作成した同大学のウィル・アーウィン研究員は、「抵抗運動への支援は、ソフトパワーとハードパワーの間のギャップを埋める一つの手段と考えることができる」とその意義を強調した。

 破壊活動には、敵対的政権や占領勢力の孤立化、不安定化、その正統性を失わせることが含まれ、ソ連、ポーランド、アルバニア、中国、チベット、アフガニスタン、北朝鮮、クウェート、イラクなどでの作戦が分析されている。

 威圧作戦は、威嚇や武力で抵抗勢力を支援し、米国の利益に反する外国政府の政策を変更させるもの。北ベトナム、アンゴラ、ニカラグア、カンボジア、アフガン、コソボなどがその例として挙げられている。

 また政権転覆は、抵抗勢力を支援し、米国に敵対的な政権、米国の利益を脅かす政権を転覆させるためのもので、アルバニア、キューバ、インドネシア、アフガン、セルビアが挙げられている。

 報告によると、作戦の70%は破壊工作型で、53%が成功、41%が失敗した。威圧作戦の成功率はさらに高く75%、転覆工作は71%が失敗している。

 アーウィン氏は「民主主義の後退や全体主義的政権の台頭がこのところ、数多く指摘されている。一党支配、独裁支配、独裁的軍事政権が存続し、国家を支配し、住民らは、民主主義が制限され、かつて享受していた自由が奪われている」と指摘した。

 報告は、全体主義国家は現在、ゆっくりと着実に、世界の民主主義の破壊を進めていると主張。その手法は、政治的敵対勢力の拘束、選挙不正、司法への介入、インターネット利用の制限や禁止、言論の自由の制限、抗議行動への取り締まり、メディアへの検閲と脅迫、圧力に屈しないジャーナリストの収監などがある。「米国の利益を脅かす世界の抵抗運動の動向を予測できれば、米国の外交・情報・国防機関は大きな恩恵を受ける。包括的な対応策を短時間で作成し、介入のシナリオを描くことが可能になる」と報告は指摘している。