30年続く「海浜クリーン作戦」、海洋ゴミ問題で新聞制作も
かほく市立七塚小学校、今年度の環境美化教育最優秀校に
石川県かほく市の市立七塚(ななつか)小学校(坂本由紀子校長)では平成2年(1990)から4年生が中心となり、毎年6月下旬に砂浜の美化運動に取り組んでいる。地元の人たちも巻き込んだ活動で、漂着ごみを回収する一方、前年とのごみの違いを調べ、それを新聞にまとめて全校に報告している。こうした独創的な活動が認められ、今年度の「環境美化教育最優秀校」に選ばれた。(日下一彦)
ポスターを手作りし、地域にボランティア呼び掛ける
七塚小学校は日本で3番目に広い内灘砂丘(内灘町)から、能登半島を北に伸びる砂浜に面し、学校の裏手には木津(きづ)海水浴場が広がっている。校舎から徒歩数十歩、1分以内に砂浜に出られるのが自慢の一つだ。浜遊びやマラソン大会など学校行事に活用され、子供たちにとって親しみ深い場所だが、近年は漂着ごみが目立ち、砂浜の幅も随分狭くなっている。
こうした状況に危機感を持った4年生が、同年、総合的な学習の時間に海の保全に向けた行動を開始した。まず、海岸で実態調査を行い、どんなごみが多いかを前年度と比較しながら問題意識を高め、浜の環境を守るために自分たちで何ができるかを検討。その結果、児童会に「海浜クリーン作戦」を提案し、全校児童で実施することにした。
さらに、地域にも広く呼び掛ける必要性を実感し、クリーン作戦ボランティア募集のポスターを手作りし、公共施設や商店などに掲示を依頼。同時に水難事故防止教室でお世話になっている金沢海上保安部にも協力してもらい、学校を超えて地域を巻き込んだ取り組みに発展した。
また、美化活動を通して課題を見つけ、海洋ごみ問題などを掘り下げた新聞制作にも挑んでいる。これらの活動は4年生が主体となって発信しているが、すでに体験している5、6年生がサポートし、より強固な体制を築いているのも同校の最大の特徴でもある。
今年度の調査では中国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、スリランカからの漂着ごみが確認された。これらの地域の状況をインターネットで調べると、人口が多く、ごみを処理する施設が少ないので、そのまま川や海に捨てられ、それが日本に漂着したことが学習できた。研究成果は模造紙に描き、掲示板に張り出している。
同実行委員長の山本亞未さん(4年)は、「日本の海岸なので、ほとんど日本のごみと思っていたのに外国のごみがたくさんあって意外でした」とビックリ。「私たちの活動でごみが少なくなっていくのはうれしい」と微(ほほ)笑んでいた。新聞制作についても「みんなに伝えたいことがたくさんあって、その中から大事なことをピックアップするのが大変でした」と振り返った。
坂本校長は「30年間、活動を続けてこられたのは、1年生の頃から浜で遊び、クリーン作戦することが当たり前のように根付いているからでしょう。子供たちの力で繋(つな)げてくれたと感じます。また教職員が異動し、子供たちが卒業しても、運動を支えてくださる地域の方々がいらっしゃることも大きいですね」と話している。
同校のある木津地区は、かつて漁師町として栄え、今も地域の繋がりが強い。子供たちの活動を温かく支援していこうとの機運が高い。また、学校創立が明治6年と古く、校長室には歴代校長の写真がズラリと並び、歴史を伝えている。校庭には聖徳太子や二宮尊徳像が立ち、新設校には見られない風景だ。
七塚小学校は今年度推薦された37校のうち、最高賞に当たる環境美化教育最優秀校の「文部科学大臣賞」を受賞した。1月25日に東京の浅草ビューホテルで表彰式が行われ、山本さんが活動報告する。同賞は清涼飲料などの飲料業界の団体で作る「食品容器環境美化協会」が毎年、全国の小中学校のうち地域と連携しながら継続的に環境美化に取り組んでいる学校に贈っている。今回で19回を数える。