沖縄にも大規模地震が来る! 県民の意識と備えが不十分

福和伸夫・名古屋大減災連携研究センター長が予測

那覇で災害危機管理シンポジウム

 年間の観光客が900万人を超える沖縄県で大規模な災害が発生した場合、どう乗り切るのか。空港や港が使えず、他県からの支援が容易に得られないことが想定される中、どのような対策を取るべきなのか。災害危機管理上の課題や対応策について考えるシンポジウムが18日、那覇市で開かれた。 (沖縄支局・豊田 剛)

在沖外国人への情報伝達が課題

福和伸夫氏

基調講演する福和伸夫氏=18日、沖縄産業振興センター

 6434人が亡くなり、負傷者は4万人以上、約64万棟の住宅が全半壊するなど甚大な被害が出た阪神淡路大震災から17日で24年。その後も、2011年の東日本大震災、16年には熊本地震など、日本は数多くの大規模震災に見舞われた。昨年だけでも島根県西部、大阪府北部、北海道胆振地方中東部でM(マグニチュード)6を超える地震が発生した。沖縄県は過去100年、大地震による被害を受けていないが、2010年には沖縄本島沖南東部の琉球海溝でM7・2の地震が発生した。

 名古屋大学大学院環境学研究科附属地震火山研究センターの田所敬一准教授、琉球大学理学部の中村衛教授、静岡大学防災総合センターの安藤雅孝客員教授らのグループは昨年8月、琉球海溝沿いのプレートの境目が一気に破壊される可能性があり、これが東日本大震災や南海トラフ地震と同様のリスクがあるという報告書をまとめた。調査結果は米科学雑誌「ジオフィジカル・リサーチ・レターズ(オンライン版)」に昨年7月、掲載された。

 沖縄県は毎年、総合防災訓練を行っている。その中で、自治体や警察、消防署、自衛隊、民間インフラ関連企業などとの連携を確認している。それに加え、陸上自衛隊第15旅団(那覇市)が6年前から「美ら島レスキュー」と題する図上訓練を実施している。17年から県との共催になり、6回目となった昨年は、米軍を含めた100を超える機関から約1300人が参加した。

沖縄にも大規模地震が来る! 県民の意識と備えが不十分

シンポジウムのパネリストら=18日、沖縄産業振興センター

 今回の災害危機管理シンポジウムは、沖縄県民に防災危機管理の意識を高め、沖縄に滞在する外国人にいかに情報伝達するかを目的で開催されたもの。行政職員、地域防災に定められている機関の職員、災害時外国人サポーターら約150人が参加した。

 沖縄県には現在、1万6000人の外国人が暮らしており、国籍は120カ国に上る。これに加え、年間200万人を超える外国人観光客が沖縄を訪れる。大規模震災が発生した場合、空港や港が使えず、容易に他県からの応援が得られないことが想定される。

 主催者を代表して沖縄県国際交流・人材育成財団の根来全功国際交流課長が講演し、「災害時の外国人のニーズを知らなければならない」と指摘した。京都市が在留外国人を対象に行ったアンケートでは、「情報が欲しいが入ってこない」という問題が浮き彫りになったという。「日本語の分かる人と分からない人の情報格差をなくす努力が必要」だが、いざという時は外国語能力以上に問われるのが相手を理解する気持ちや対応能力であると説明した。

 続いて基調講演したのが南海トラフ防災対応検討ワーキンググループ主査で名古屋大学・減災連携研究センター長の福和伸夫氏。福和氏は冒頭、シンポジウム会場を視察した所感として、「公的機関の建物なのに、ひとつも家具が止まっていない」と述べ、家具転倒防止対策が何一つ取られていないことに苦言を呈した。

 「沖縄に大地震は来ないというのは間違い。必ず大きな地震があるだろう」と予測する。「最近は台湾と熊本で多くの大地震が起きており、その間にある沖縄で起きないということはない」と指摘した。沖縄では、1971年に沖縄本島南方の沖合でM8クラスの海溝型地震が発生し、11㍍の津波が押し寄せたことが報告されている。

 昨年、島根と大阪でM6・1の地震が起きたが、被害は100倍の差だったことを指摘し、「人は離れて住んだ方が安全」だと強調。阪神淡路大震災から学んでいないと批判した。沖縄については、屋根は重く、窓が大きいという家屋の特色や住宅が密集していることから、大規模震災での被害は大きくなると想定した。

 パネルディスカッションでは、福和氏に加え、大規模震災の時の重要インフラとなる携帯通信、病院、空港の担当者が登壇。一般財団法人ダイバーシティ研究所の田村太郎代表理事がコーディネーターを務めた。

 パネリストらは、沖縄県民が大震災に対する備えや意識が十分でないことを認識したと強調。大震災では刻一刻と状況が変わり、「ツイッターなどのSNSが役に立つ」ことを確認した。