沖縄尚学高、米ワシントン州立大と連携協定
グローバル社会を見据える
沖縄尚学高校(名城政次郎校長)はこのほど、米国のワシントン州立大学(WSU)と高大連携協定を締結した。日本の高校が米国の公立大学と提携するのは前例のないことだ。沖縄尚学が取り組むグローバル教育が高く評価された。(那覇支局・豊田 剛)
大学側 学生確保競争生き残り図る/高校側 学習意欲など低下に悩む
双方の思惑が一致 高大連携の背景に
ここ数年、高大連携が進められる背景には、少子化による学生確保競争で生き残りたい大学と、学習意欲や進路意識の低下に悩む高校、双方の思惑が一致したことが挙げられる。
沖縄尚学は、複数の米国の名門公立大学と高大連携を結んでいる。中でも、これまでワシントン州立大とMemorandum of understanding(MOU=了解覚書)を結んでいたが、12月6日には、Memorandum of agreement(MOA=合意覚書)を締結した。
2017年11月には名城政一郎副理事長がWSUを訪問し、「平和で秩序あるグローバル社会の構築に貢献するグローバル教養人の育成」という教育目標を共有した上で、MOUを締結した。その後、WSUから教育学部の学部長と副学部長、WSU所在地のワシントン州プルマン市の教育長が沖縄尚学を訪れ、信頼関係を深化させた。今回は、その土台の下、お互いの教育内容を信頼し、さらに踏み込んだMOAの締結に至った。
今回のMOAの大きな特徴は、①入学資格として英検準1級以上が必要だが、TOEFLは免除②合格者の定員なし③国内外の他大学との併願可能で、合格しても辞退できる④受験料は無料⑤給付型奨学金の付与――だ。また、高校2年の2学期から出願が可能なのが特徴だ。
国内には多数の高大連携が締結されているが、複数の教育機関の調べによると、国内の高校と海外の公立大学がMOA締結したケースはないという。
今回、MOA締結のために来校したのは、元駐モルドバ米国大使で外交官のアシフ・チャードリー副学長。米国の外交政策への貢献で「大統領功労賞」を受賞している。
チャードリー氏は「教育機関は、世界はどんどん縮まり、強い結び付きが必要となるという前提で考えるべきだ」と指摘。「国境を超える、素質あるリーダーを育てることは全ての教育機関の責任だ」と訴えた。その上で、同氏は「世界各国を回る中で沖縄尚学ほどビジョンを共有できる学校はないと確信した」と語る。
WSUの総学生数約3万1000人のうち、外国人は約2100人で全体の8%だ。10年後にその比率を18%(5000人)に増やす目標を掲げている。
17年12月、米国の4大学と推薦入学協定を締結するなど、提携校は増え続けており、今年度末までに海外の高校・大学との提携は35校になる。
中高一貫私学の沖縄尚学は沖縄県で唯一、沖縄伝統空手を必須科目としており、ボランティア活動など年2回以上の社会貢献活動に参加している。少子高齢化やグローバル社会を見据えた「21世型教育」を推進しており、自己実現力と社会貢献力を養うことに力点を置く。空手とボランティア活動以外の具体的な教育目標として①大学進学③英検取得③異文化交流――を掲げている。こうした取り組みが海外の高校・大学に高く評価されている。
◎沖縄尚学高校とワシントン州立大学(WSU)間の協定書(MOA)の要旨
沖縄尚学とWSUは、基礎研究および応用研究(学術研究)、教育および研究、テクノロジーおよび情報伝達、経済開発に関わるプログラムと活動を実施する。両校が合意した共同プロジェクト、プログラムおよび活動を協力して実施する。
プログラム強化に当たり、過去に構築された協力関係に基づき、新たにパイロットプログラムを実施する。これは、沖縄尚学の生徒のWSU入学を奨励するものである。