デジタルが変える学校教育の未来

聖心女子大学非常勤講師 榎本竜二氏

デジタル以外に体験的学習も必要

 教員を目指す学生・大学院生をはじめ、教育問題に関心のある人のための人材育成講座「こんぺいとうゼミ」(主催=NPO法人BOON、内山葉月理事長)がこのほど、都内で行われ、「デジタルが変える学校教育の未来」と題して講演会が開かれた。聖心女子大学非常勤講師の榎本竜二氏は「教育のデジタル化」に関して教育現場のあり方について語った。参加した大学生ら30人余は講師の話に熱心に耳を傾けた。

学校へ来ることに意味がある

デジタルが変える学校教育の未来

聖心女子大学非常勤講師 榎本竜二氏

 今回の学習指導要領でポイントになっているのが、教科等を超え、学習の基礎として、活用される資質・能力をいかに育み、育てるかだ。全ての学習の基礎となる「言語能力」、「情報活用能力」、どうやったらこの問題は解決できるのだろうという「問題発見・解決能力」の3点が挙げられている。今回から学習の資質能力の部分に「情報活用能力」が加えられている。

 子供たちの情報活用能力の育成とは①情報の収集、判断、処理、発信、伝達、保存・共有などの情報活用の実践力②自らの情報活用を評価・改善するための理論や方法の理解、情報手段の特性の理解③情報モラル教育を含めた情報社会に参画する態度の育成――がある。

 文部科学省の報告書に見るべきものがある。画像や動画を活用した分かりやすい授業で興味・関心が高まり、学習意欲が高まった。学習の習熟度に応じたデジタル教材活用で知識・理解が定着した。電子黒板を用いた発表・話し合いで、思考力・表現力が向上したと記している。

 その一方で、留意点として、デジタル教科書・教材等を提示するだけでなく、観察・実験等の体験的な学習が必要。発音や対話の方法を学習するだけでなく、対面でのコミュニケーション活用を併せて行うことの必要性を強調している。このことは、デジタル教科書で学べば、学校へ来なくても済む、ということではなく、学校へ来ることの意味を表している。

 デジタル教育を「主体的・対話的で深い学び」に結び付けるには、基礎・技能の基礎・基本を「習得」した後、デジタル機材で得た知識・情報を活用する“知恵”を身に付けることが重要。得た情報を誰かに話したり、実生活の問題を解決できることに「活用」し、自分の理解度が分かり、確認でき、理解が深まる。誰かに伝えることを前提に自ら学習するようになり、他の意見や発言も身に付けるために一生懸命聞くようになる。学習意欲「探究心」も高まり、学びの楽しさを感じることができる。

 先生が使っていて、子供たちが理解する姿に喜びを感じ、楽しい授業であってほしい。

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 教員志望者のための人材育成講座「こんぺいとうゼミ」は「電通育英会」人材育成事業の一環として行われている。