収穫までの苦労と喜び実感、秋田県全域の小中学校で学校農園
カボチャ、ジャガイモ、米などを育てる学校農園の活動が秋田県全域で行われている。単に農作業体験ではなく、作業工程を写真とメモで記録したり、販売から新商品の開発まで行ったりと、子供たちの創意工夫がみられる。苦労して育てた時の感動はもちろん、地元愛の育成もキーポイントとなっている。(伊藤志郎)
展示物にみられる子供たちの創意工夫
秋田県内の、主に小中学校を対象とする学校農園の活動発表が、このほど秋田拠点センターアルヴェ(秋田市)で開かれた。第141回秋田県種苗交換会の一環である。展示物と、訪れた大人の声から学校農園の魅力を探った。
各校とも大判ポスターで、多くの写真を使い、分かりやすく説明している。子供の生の声が新鮮だ。テーブルには、カボチャ、大根、水稲、ネギ、サツマイモ、大豆など収穫した作物が並ぶ。
種苗交換会は、県内の農家が出来栄えを競い合う一大イベント。野菜、花、果物など各部門で審査を行い、優秀者は表彰される。この学校農園部門で最優秀賞、秋田県知事賞、NHK秋田放送局局長賞と三つも賞を取ったのは、潟上市立飯田川小学校だ。
1・2年生から5年生までテーマを設定。4年生は大豆の加工品を調べ、しょうゆ、豆腐、納豆のほか、きな粉、甘納豆、おから、油揚げ、がんもどきまで調査。味噌(みそ)作り体験では、大豆を蒸すところから全工程を写真付きで解説。味噌を大きなだんごにしてケースに入れ、白い紙をかぶせて蓋をするところで終えている。「JAあきた湖東のみなさん、ありがとうございました。一年後がたのしみだなあ」とは児童の感想だ。
また5年生は、田んぼとバケツ稲コースに分かれて作業。「手歯こきが一番大変だった。脱穀は力がいるが、すごくいい玄米になった」と説明している。立ち寄った70代の女性は「農家でも、子供になかなか教えられない。大豆の収穫だけでなく、次の年に味噌作りを考えているのはすごいこと。感謝の言葉も素晴らしい」と感心していた。
全体を見渡した第一印象は、作業の大変さと収穫の喜びだ。能代市立渟城(ていじょう)西小学校では総勢75人でカボチャ、ネギ、ジャガイモ、サツマイモを植えた。カボチャの「ながちゃん」「ほっとけくりたん」など3種類を植えた女子児童は「土に穴を掘って植えたあとも、水や肥料を上げなくてはいけないので大変だと思いました」。集合写真では、収穫したジャガイモの多さに、かっぱを着た児童の顔は充実感に満ちていた。
開校14年目の由利本荘市立本荘東中学校では、当初から古代米アートに取り組んでいる。3年生を中心に、隣接する田を活用。今年は「DREAM」の文字に決定。稲が育って3カ月、黒っぽい5文字が見事に浮かび上がる。収穫で女子生徒は「束ねた稲はずっしりと重かった。小さかった稲が約100日間でこんなに大きく成長するのに驚いた」と感想を書いている。
西目小学校のコーナーでは、大仙市から来た70代の米農家の夫婦が、稲を見て、もみの数も多く粒も大きくて立派だと褒めていた。このように作物の出来栄えを褒める声は随所で聞かれた。
また、地元の名産を栽培している学校が多いことに気付く。横手市立山内小学校は地元名物の、いものこと山内ニンジンの栽培に取り組んだ。「自分たちで植えて育てて収穫して調理して、おいしいいものこ汁を作ることができて良かった」
テーブルには、大きな株にまだ10個以上もいものこが残っているのが展示されて「株を初めて見た」と言う主婦もいた。
一方、「マリーゴールドとの共生でネギの病気を防げるか」というテーマで研究したのは、県立栗田支援学校。結果は、さび病が発生せず、ネギは肥大しマリーゴールドは元気だった。同校では、近くの保育園で、ジャガイモや花の植え付けを手伝っている。収穫物を、お裾分けや販売して、地域とのつながりを深めている学校も多い。
30年以上続く能代市立竹生小学校の竹っこ農園は、トウモロコシ、ミニトマト、キュウリ、サツマイモ、枝豆など多品種を栽培する。
収穫物は、なべっこや親子レクリエーション(スイカ)のほか、学級ごとにおやつを作って楽しんだ。福祉施設へのプレゼントも続けている。
赤シソの製品化に取り組むのは県立比内支援学校。企業の協力を得ながら、今年は赤しそジュース、黒ニンニク、シシトウを使った瓶詰の「うま辛どんどん」を商品化した。去年開発したしそゼリーは大人気だという。
取材して感じたのは、この活動は農作業はもちろんだが、企画やコミュニケーション、発表、観察など総合的な力を子供に身に付けさせるいい機会になっていることだ。