貧困家庭の子供の居場所づくりの運営や支援
沖縄大学で開催された地域円卓会議で活発な議論
沖縄県内の子供の貧困の現状や課題を共有し、解決策を考える地域円卓会議(主催・沖縄子どもの未来県民会議)がこのほど、那覇市の沖縄大学で開催され、貧困家庭の子供の居場所づくりの運営や支援のあり方を話し合った。(那覇支局・豊田 剛)
職員の対応力や“自走”が課題、助成支援・企業との連携急務
沖縄県で実施した平成27年度版「子どもの貧困実態調査」によると、29・9%の子供が貧困状態に置かれていることが明らかになった。全国平均の倍以上という深刻な沖縄の子供の貧困状態に緊急に対応するため、国・沖縄県・市町村が連携し、翌年度から「沖縄子供の貧困緊急対策事業」による子供の居場所設置が進んでいる。ここで言う「居場所」は家でも学校でもない地域が支える居場所で「第三の居場所」と言われている。
こうした居場所は沖縄では今年6月時点で26市町村、126カ所に設置されている。これら居場所の中には、不登校生徒などに特化した専門的な支援を行う居場所のほか、児童館や自治会など地域に根差した居場所などがあり、学校や家庭以外の第三の子供たちの受け皿となっている。
円卓会議では行政、学術、自治会、ボランティア団体の関係者らが活発な議論を交わした。
子供の貧困や居場所づくりに携わる沖縄県子ども未来政策課の喜舎場健太課長は、沖縄の子供は貧困だけでなく不登校率も全国ワーストで「問題は根が深く、行政だけでは解決できない。企業、地域が関わり、県民運動にして乗り越えていきたい」と訴えた。子供の居場所については、「人口比では全国で多い方だ。しかし、まだ、1カ所も設置されていない小学校区が県内の7割もあり、離島部でも遅れている」と報告した。
沖縄大学人文学部福祉文化学科の島村聡准教授は、学者の観点から子供の居場所について解説した。理想の居場所は①潜在的に課題のある子もつながって来る場②不良など課題のある子を排除しない雰囲気のある場③子供がやりがいを感じる、主体的に何かに取り組める場④地域社会の大人との交わりのある場――だと指摘した。
子供の居場所は、職員確保、ボランティア確保、費用捻出など運営が安定していることが重要だと指摘した上で、取り組むべき課題として、①開催頻度を上げること②職員研修やネットワークづくりなどを通じて対応力を上げること③場所を確保し、交付金に頼らず“自走”すること――を挙げた。
那覇市内には現在、子供支援のための居場所は16カ所(15団体)あり、子供の貧困対策の一環として食事提供や学習支援等の活動を実施している。運営するのはボランティア団体や自治会、NPOなどさまざまだ。
その中の一つ、NPO支援団体を代表して一般社団法人ビクトリーチャーチの細田光雄代表理事が、運営の仕方や課題を参加者と共有した。細田氏が運営する施設は週6日間、朝10時から午後6時半まで開所しており、来所者は通常30人、土曜日には50人を超える日もあるという。那覇市内では最大規模のサービスを施し、運営状況の良好さを強調した。
「年間約600万円の運営資金が必要だが、那覇市から受ける補助金年間120万円以外は、寄付で賄っている。近所のレストランや弁当屋は無償で協力してくれ、周辺の住民は家庭菜園、残りものを持ち寄り支援してくれる。月々1万円振り込んでくれる人、県外からも定期的に寄付してくれる人もあり、“自走”は可能だ」
細田氏によると、「課題は中学生支援がないこと」で、「万引き、飲酒など特殊課題への対応が足りない。夜の学童もやりたい」と意気込む。
一方、自治体が運営する施設の場合は、月1~2回しか開放できていないケースもある。
那覇市社会福祉協議会はサポートセンター「子どもと地域をつなぐサポートセンター糸」を設置。15団体をサポートし、実態把握と課題整理のためのヒアリング、ワークショップを行っている。
サポートセンター職員の城間えり子氏は、「貧しい子供を集めて何するのか」「親の指導が先ではないか」などと言われることもあるが、しっかり説明し、情報発信することで理解・共感してもらえていると話した。ただ、自治体が運営している居場所のほとんどは設備、人員、予算の確保の課題に直面しており、人的支援、寄付を募るなどの助成支援、協力企業との連携が急務となっている。







